『モアザンワーズ / More Than Words』をAmazon Primeで観ました。
コミック原作のドラマで、1話35分前後、全10話となるドラマです。
Amazonオリジナルのドラマは、無駄なシーンが多くて、途中で挫折することが多いのですが、『モアザンワーズ / More Than Words』はイッキ見でした。
脚本は浅野妙子さん!
フジテレビ『大奥』、ドラマ『八日目の蝉』など、ヒット作の脚本を担当している浅野妙子さんが、全10話の脚本を書かれています。
ドラマの内容が内容なだけに、無言のシーンが少なくなく、表情や行動で微妙な心理を描き出しているのですが、これらのシーンが冗長ではなく、必要なシーンなのだ、と思えるドラマです。
また、配信ドラマだからなのか、エンドロールにも最後まで見せる工夫があります。
エンディングに流れる曲とともに、エンドロールの背景であっても、見逃せない映像となっていて、工夫が感じられました。
藤野涼子さんでなければ演じられない
美枝子、マッキー(槙雄)、永慈の3人が出会い、マッキーと永慈が恋に落ちて・・・。
美枝子は、恋愛することに大きな価値を感じられない人間として描かれていて、マッキーと永慈の恋を応援するポジションに居心地の良さを感じています。
しかし、永慈の父は、マッキーを認めながらも、別れるように宣言します。
マッキーは、その父の過去を知り、反発することもできません。
そして、ふたりが一緒にいられるなら、と美枝子は、ふたりの子どもを生むことを決意します・・・。
映画『ソロモンの偽証』で主演デビューした藤野涼子さんが、こんな美枝子を演じています。
藤野涼子さんは、『腐女子、うっかりゲイに告る。』で、ゲイに恋する女子高生を演じていましたが、なかなかの難役を演じることができる実力派だと思います。
マッキー役の青木柚さんは、子役出身で主演映画の公開が目白押しという、こちらも実力派。
美枝子に子どもができて、永慈の関心が自分から美枝子に移りつつあることに、傷ついてしまって逃げ出す心理が、よく伝わってきました。
また、純粋でお人好しの永慈は、MEN'S NON-NO専属モデルの中川大輔さんが演じていて、この3人だからこそ成立するドラマという印象が残りました。
さらに、脇を固める役者さんもすごいんです。
永慈の父に佐々木蔵之介さん、永慈がバイトする染め物工場の主に大森南朋さん、マッキーの同級生で、のちにマッキーに美枝子と永慈に会うようにすすめる朝人(兼近大樹さん)の兄に斎藤工さんという豪華さです。
悲しい結末なのか?
『モアザンワーズ / More Than Words』のキモは、美枝子が恋愛に興味を持てない、性的な行為を好まない、いわゆるアセクシュアルの女性として描かれていることではないかと思います。
自分は女性だから、永慈の父が求める子どもを生むことができる。
子どもがいれば、マッキーと永慈と3人で幸せな環境をキープすることができる。
美枝子は恋愛感情が薄いので、ちょっとした関係性の変化によって、これまで感じたことのない感情が芽生える可能性があることが、予測できないのでしょう。
永慈は、自分たちの子どもを生んでくれる美枝子を大切にしようとする一方で、マッキーは恋人の心変わりを感じてしまうわけです。
美枝子が、良いことだと信じていたことによって、3人の関係が決定的に変わってしまう。
これは悲劇でもありますが、ごく普通の社会で生きようとする永慈にとっては、前進することになります。
人は年齢を重ねると、幸せの基準が変わるのかもしれません。
そんなことを教えてくれる、ある種の残酷さを秘めたドラマだと感じます。
いっぽうのマッキーは、自分が幸せだった時間を引きずって数年間を過ごします。
しかし、同級生の朝人と再会することで、自分も一歩前に進もうとします。
ラストは、マッキーが青春時代と決別するドラマにも見えました。
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