2019年はキャッシュレス元年といわれるようになるかもしれませんね。
実はいま、流通産業論の最後の講義資料をつくっています。
テーマは「キャッシュレス」。
流通産業論とは直接的に関係はありませんが、キャッシュレス化のなかには、ポイントがお金として使えるということも含まれていて、経営学科の学生としては、知っておくべき事柄も含まれているためです。
銀行ですら、キャッシュレス化を進めているという、これは国策です。
いろいろと考えているうちに、こんなことを政府は目論んでいるのかな?と思うようになりました。
ここ数年、田舎の温泉地などを巡っていて感じることは、携帯電話が使えないような秘境の宿はクレジットカード決済できるのに、中途半端な田舎の宿は現金主義だという矛盾です。
さらに、ローカルなバス路線や鉄道の場合、SUICAに代表される電子マネーが使えないところも多く、たとえば毎週通っている茨城県水戸市内を走る茨城交通では、SUICAは使えず、独自の電子マネーを使わなければなりません。
利用者を、かえって不便な気持ちにさせるという矛盾が、ここにもあります。
どこかに出かけるときに、現金がないと何も出来ない国=日本、という現実があります。
2010年だったと思いますが、マイアミに行ったときのこと。
テロ対策のために入国審査が厳しくなっていて、指紋を取られましたが、このときに質問されたのは、手持ちの現金についてでした。
私が「日本円で1万円と少し」と答えると、係官は「クレジットカードも?」と聞いてきたので「もちろん、持ってるよ」と答えて、すんなり通してもらいました。
アメリカでは、クレジットカードさえ持っていれば、なんの問題もないのだということを、改めて知らされたエピソードです。
海外に出かけるときに、あなたはいくらぐらいの現金を持っていきますか?
夕方になると、北京の街なかに、日本では信じられないような露天商があらわれます。
面川が見たのは、ポテトチップスを量り売りする露店です。
パッケージも何もなく、大きな平たい板箱に、ナビスコのチップスタースタイルのポテトチップスがずらりと並べられています。
誰が買うのかと思って眺めていると、つぎつぎと買いにくる人があらわれました。
支払いは現金だろうと思っていたら、なんとクレジットカード!
偽札が横行している中国では、現金の受け取りを拒否する店は少なくないのです。
とはいえ、クレジットカードのスキミングもあるので、よほど信頼できる店でないと、クレジットカードの利用を躊躇しますが。
しかし、電子マネーの利用がどこよりも早かった日本。
面川は、こんな経験というか見聞もしています。
10年以上前のことで、SUICAが急速に普及しはじめた時期だと思います。
JR品川駅のホームで、自販機から飲み物を買いました。
支払いはモバイルSUICAで、そのころはガラケーでした。
そのとき、同じホームには外国人旅行者が数人いて、自販機で飲み物を買いたがっているようだったのですが、私が携帯電話をかざしてドリンクを購入したのを見たからか、その方たちは自販機での購入を諦めてしまいました。
たぶん、特別なツールを持っていないと自販機では買えない、と判断したからだと思います。
そもそも、自販機は日本以外の国にはほとんどありませんので、現金でも買えることを知らなかったのかもしれません。
何がいいたいかといえば、わずか10年ほど前には、世界で最も電子マネーが利用されているキャッシュレス化が進んだ国が日本だった、ということです。
なのに、今ではキャッシュレス化に遅れた後進国になってしまいました。
中国では偽札が多いので、小売店には偽札チェッカーが備えられています。
タクシーでは偽札チェッカーを使っていないので、外国人がタクシーに乗ると、偽札を掴まされることがあります。
さらに、日本の経済はいまだにストック中心だということがあげられるとおもいます。
ストックとは資産のことで、土地や家屋、預金や株式などを指します。
そもそも、資産を持っていないと、豊かな生活が送れないという経済社会が、日本では当然のこととして受け止められています。
だから、お年玉は老後のために貯金する、という言葉になります。
政府も認めていることですが、キャッシュレス化によって、人はこれまでよりもお金を使うようになります。
手元の現金が減らないのですから、ついついお金を払ってしまうということのようです。
心理的なお財布のゆるみは、そのままフロー経済に影響を与えます。
日本のGDPの半分以上は個人消費なので、キャッシュレス化が進むと、個人消費が伸びる⇒GDPが増大する、という図式が予想できます。
日本のGDPは、20年以上もの間、増えていません。
むしろ減っていることさえあります。
先進国の中で、GDPが増えていないのは日本くらいで、ヨーロッパ各国でも上昇しています。
日本だけが伸び悩んでいるのは、その原因が現金決済主義であるから、という結論に至ったのではないでしょうか。
世界経済が不安定になると円が買われるくらい、日本経済の基盤は盤石だと世界中の投資家が認めているにもかかわらず、日本経済が元気で好景気だという話は聞いたことがありません。
政府は、プラスの経済成長が続いているから好景気だ、と無理やり主張していますが、給与が数千円くらいしか増えない経済環境を好景気だと言えるでしょうか?
アメリカ経済が元気で、GDPが増大している理由は、いくつでもあげられるでしょう。
こと、お金に関して言えば、アメリカはクレジットカードを中心としたキャッシュレス社会が定着しているため、借金してでもお金を払うことに抵抗がないというマインドです。
ストック経済のなかで、現金が何より大切で現金主義の日本人と、マインドが決定的に違います。
現金で支払う経済が続く限り、日本のデフレ傾向には歯止めがかからないと、政府は気づいたのではないでしょうか。
ちなみに、ビッグマック指数(マクドナルドのビックマックの国別価格)は、アメリカが613円に対して、日本は390円です。
アジア各国に出かけても、日本の安さは驚異のレベルに達しています。
人口減少がつづく日本で、GDPという売上を上げるためには、2つの方法があります。
ひとつは、一人の人にたくさん買ってもらうこと。
マックでは、いつもビッグマックを2個買ってもらうことです。
ビッグマック2個でなくても、ポテトを買おうというくらいになってもらうこと。
もうひとつは、単価を上げること。
消費量が増えないのであれば、単価を上げるしかありません。
国は、GDPを増やそうと、消費者のお金に対する心理的なハードルを下げるために、キャッシュレス化を推進しようとしている、と考えられるのです。
また、物価が上昇し、インフレが進めば、国の借金も減ります。
毎月入ってくる給与や報酬が中心の経済となれば、国も日本の経済動向を把握しやすくなるというおまけも付いてきます。
さらに、キャッシュレス化によって、お金の動きがデータ化されるため、税金も取りやすくなります。
現金だと、税逃れを完全に補足することは無理ですから、国の税収も増えると考えているかもしれません。
キャッシュレス化によって便利になる分、国民ひとりひとりのお金の行方が補足され、分析されるようになるということではないでしょうか。
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【副島 隆彦】 マイナス金利「税」で凍りつく日本経済
実はいま、流通産業論の最後の講義資料をつくっています。
テーマは「キャッシュレス」。
流通産業論とは直接的に関係はありませんが、キャッシュレス化のなかには、ポイントがお金として使えるということも含まれていて、経営学科の学生としては、知っておくべき事柄も含まれているためです。
銀行ですら、キャッシュレス化を進めているという、これは国策です。
いろいろと考えているうちに、こんなことを政府は目論んでいるのかな?と思うようになりました。
日本は決済に関して不便な国
面川は、支払いはクレジットカードか電子マネーという、キャッシュレス推進派です。ここ数年、田舎の温泉地などを巡っていて感じることは、携帯電話が使えないような秘境の宿はクレジットカード決済できるのに、中途半端な田舎の宿は現金主義だという矛盾です。
さらに、ローカルなバス路線や鉄道の場合、SUICAに代表される電子マネーが使えないところも多く、たとえば毎週通っている茨城県水戸市内を走る茨城交通では、SUICAは使えず、独自の電子マネーを使わなければなりません。
利用者を、かえって不便な気持ちにさせるという矛盾が、ここにもあります。
どこかに出かけるときに、現金がないと何も出来ない国=日本、という現実があります。
2010年だったと思いますが、マイアミに行ったときのこと。
テロ対策のために入国審査が厳しくなっていて、指紋を取られましたが、このときに質問されたのは、手持ちの現金についてでした。
私が「日本円で1万円と少し」と答えると、係官は「クレジットカードも?」と聞いてきたので「もちろん、持ってるよ」と答えて、すんなり通してもらいました。
アメリカでは、クレジットカードさえ持っていれば、なんの問題もないのだということを、改めて知らされたエピソードです。
海外に出かけるときに、あなたはいくらぐらいの現金を持っていきますか?
露天商でさえクレジットカードで払える
同じころ、仕事でひんぱんに北京に行くようになりました。夕方になると、北京の街なかに、日本では信じられないような露天商があらわれます。
面川が見たのは、ポテトチップスを量り売りする露店です。
パッケージも何もなく、大きな平たい板箱に、ナビスコのチップスタースタイルのポテトチップスがずらりと並べられています。
誰が買うのかと思って眺めていると、つぎつぎと買いにくる人があらわれました。
支払いは現金だろうと思っていたら、なんとクレジットカード!
偽札が横行している中国では、現金の受け取りを拒否する店は少なくないのです。
とはいえ、クレジットカードのスキミングもあるので、よほど信頼できる店でないと、クレジットカードの利用を躊躇しますが。
国策でキャッシュレス化する日本
2020年の東京オリンピック開催にむけて、国策でキャッシュレス化が進む日本。しかし、電子マネーの利用がどこよりも早かった日本。
面川は、こんな経験というか見聞もしています。
10年以上前のことで、SUICAが急速に普及しはじめた時期だと思います。
JR品川駅のホームで、自販機から飲み物を買いました。
支払いはモバイルSUICAで、そのころはガラケーでした。
そのとき、同じホームには外国人旅行者が数人いて、自販機で飲み物を買いたがっているようだったのですが、私が携帯電話をかざしてドリンクを購入したのを見たからか、その方たちは自販機での購入を諦めてしまいました。
たぶん、特別なツールを持っていないと自販機では買えない、と判断したからだと思います。
そもそも、自販機は日本以外の国にはほとんどありませんので、現金でも買えることを知らなかったのかもしれません。
何がいいたいかといえば、わずか10年ほど前には、世界で最も電子マネーが利用されているキャッシュレス化が進んだ国が日本だった、ということです。
なのに、今ではキャッシュレス化に遅れた後進国になってしまいました。
ストック経済の日本
日本がキャッスレス化が進まない理由のひとつに、偽札が極めて少ないことがあげられます。中国では偽札が多いので、小売店には偽札チェッカーが備えられています。
タクシーでは偽札チェッカーを使っていないので、外国人がタクシーに乗ると、偽札を掴まされることがあります。
さらに、日本の経済はいまだにストック中心だということがあげられるとおもいます。
ストックとは資産のことで、土地や家屋、預金や株式などを指します。
そもそも、資産を持っていないと、豊かな生活が送れないという経済社会が、日本では当然のこととして受け止められています。
だから、お年玉は老後のために貯金する、という言葉になります。
国策キャッシュレス化はフロー経済への転換を狙っているのでは?
現金じゃないと決済が完了しないなんて、とんでもなく不便ですが、ではキャッシュレス化が進むと、どんな変化があるのでしょうか?政府も認めていることですが、キャッシュレス化によって、人はこれまでよりもお金を使うようになります。
手元の現金が減らないのですから、ついついお金を払ってしまうということのようです。
心理的なお財布のゆるみは、そのままフロー経済に影響を与えます。
日本のGDPの半分以上は個人消費なので、キャッシュレス化が進むと、個人消費が伸びる⇒GDPが増大する、という図式が予想できます。
日本のGDPは、20年以上もの間、増えていません。
むしろ減っていることさえあります。
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先進国の中で、GDPが増えていないのは日本くらいで、ヨーロッパ各国でも上昇しています。
日本だけが伸び悩んでいるのは、その原因が現金決済主義であるから、という結論に至ったのではないでしょうか。
アメリカ経済はなぜ元気なのか?
面川が、アメリカの株価が過去最高を記録するたびに感じるのは、アメリカ経済ってそんなにしっかりしていたっけ?という違和感です。世界経済が不安定になると円が買われるくらい、日本経済の基盤は盤石だと世界中の投資家が認めているにもかかわらず、日本経済が元気で好景気だという話は聞いたことがありません。
政府は、プラスの経済成長が続いているから好景気だ、と無理やり主張していますが、給与が数千円くらいしか増えない経済環境を好景気だと言えるでしょうか?
アメリカ経済が元気で、GDPが増大している理由は、いくつでもあげられるでしょう。
こと、お金に関して言えば、アメリカはクレジットカードを中心としたキャッシュレス社会が定着しているため、借金してでもお金を払うことに抵抗がないというマインドです。
ストック経済のなかで、現金が何より大切で現金主義の日本人と、マインドが決定的に違います。
現金で支払う経済が続く限り、日本のデフレ傾向には歯止めがかからないと、政府は気づいたのではないでしょうか。
ちなみに、ビッグマック指数(マクドナルドのビックマックの国別価格)は、アメリカが613円に対して、日本は390円です。
アジア各国に出かけても、日本の安さは驚異のレベルに達しています。
人口減少がつづく日本で、GDPという売上を上げるためには、2つの方法があります。
ひとつは、一人の人にたくさん買ってもらうこと。
マックでは、いつもビッグマックを2個買ってもらうことです。
ビッグマック2個でなくても、ポテトを買おうというくらいになってもらうこと。
もうひとつは、単価を上げること。
消費量が増えないのであれば、単価を上げるしかありません。
国は、GDPを増やそうと、消費者のお金に対する心理的なハードルを下げるために、キャッシュレス化を推進しようとしている、と考えられるのです。
ストック経済からフロー経済へ
ストック経済からフロー経済へと変化するということは、高齢者が持っている不動産や貯蓄を吐き出させるということになります。また、物価が上昇し、インフレが進めば、国の借金も減ります。
毎月入ってくる給与や報酬が中心の経済となれば、国も日本の経済動向を把握しやすくなるというおまけも付いてきます。
さらに、キャッシュレス化によって、お金の動きがデータ化されるため、税金も取りやすくなります。
現金だと、税逃れを完全に補足することは無理ですから、国の税収も増えると考えているかもしれません。
キャッシュレス化によって便利になる分、国民ひとりひとりのお金の行方が補足され、分析されるようになるということではないでしょうか。
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