『陰陽師0』、初日に観てきました。
観客の入りは上々のようでした。
では内容は?
わたし的には好きな世界観でしたが、野村萬斎さんの『陰陽師』とは、ちょっと? いや、かなり違います。
陰陽師とはなにか?
映画の冒頭で、陰陽師が国家公務員であることや、陰陽師になるための仕組み、段階など、歴史家が研究した成果をベースにしています。
平安時代の断片を、ほんの少し描いているのですが、現代人にも強く訴えかけるメッセージが含まれている映画です。
それは、映画の半分以上ともいえる、意識世界の映像化です。
山﨑賢人さん演じる安倍晴明が登場する冒頭シーンは、野村萬斎さんのほうでも描かれた有名なエピソードです。
貴族たちが、カエルを殺せるかどうか、問うと、晴明が不本意ながら殺してみせるというものです。
野村萬斎版では、呪術を使っていることが明らかですが、山﨑賢人版では、マジシャンのテクニックによって呪術に見せているというのです。
山﨑賢人版では、陰陽師の呪術の多くが、マジックのようなものであり、その効果は、受け取る相手の意識が引き起こしている、と断言しています。
陰陽師はマジシャンという立ち位置で展開する『陰陽師0』だからこそ、呪いは人間の意識が見せるものであり、意識が自らの身体にも影響を与える、ということを説明していきます。
学生に対して、陰陽博士たちが講義する内容も、何をどう意識させるか?ということ。
映画そのものが、人間の意識が、どこまで影響するのか、を描き出しているようです。
VFXがすばらしく美しいのは、意識世界だから。
そしてラストには、意識世界で死んでしまった人間が、現実世界でも死んでしまうのです。
蠱毒(こどく)
蠱毒は、陰陽道のなかで、もっとも強い呪術のひとつとされています。
『陰陽師0』では、この蠱毒も重要なアイテムというか、物語のキモになっています。
陰陽師のことや陰陽道のことを調べたことがなくても、蠱毒は有名なので、知っている人が多いと思います。
禹歩(うほ)?
安倍晴明や源博雅が、呪術の世界に取り込まれ、出られなくなってしまうのですが、このとき北村一輝さん演じる陰陽師の惟宗是邦が、たぶん禹歩・反閇(へんばい)を行っているようです。
舞踊のようにみえるので、とても美しいのですが、たぶん禹歩だろうと思いました。
本来は邪を避けるためのものですが、人間の蠱毒をおこなうために、意識世界に閉じ込める呪術としてつかっているのかもしれません。
北村一輝さんは、映画冒頭で、平安時代の言葉と発声を披露していますが、この場面も北村一輝さんなのかしら?
もしや野村萬斎さん?
と、思ってしまうくらいに美しい所作です。
このシーンが本当に禹歩かどうかわからなかったので、さっそく本を購入しました。
加門七海さんは、たしか『陰陽師0』の呪術について監修されていたように記憶しています。
禹歩についても、きっとこの本のなかに詳しく書かれているのではないでしょうか。
染谷将太さんの源博雅がすごく良い
『陰陽師0』は、安倍晴明と源博雅の出会いの物語でもあるのですが、染谷将太さん演じる源博雅がとても良かったです。
笛で、仏を呼び出してしまうような才能の持ち主である博雅だからこそ、安倍晴明は博雅を必要としたということが、納得できるような博雅なのです。
博雅にとって晴明は世の裏側に通じる存在であり、陽の博雅にたいして、陰の晴明という対称ができると思います。
純粋すぎてバカっぽくもみえる博雅がいるからこそ、晴明のすごさがひきたつというものです。
陰陽師はマジシャンだと断言していた安倍晴明ですが、ラストでは、「自分はできる」つまり、呪力を持っていると言い切ります。
もう一度観たいと思う映画です。
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