『ある男』『パレード』観ました。
NetflixもAmazon Prime も、スマホにダウンロードして持ち歩けるので、長時間電車に乗るときは、必ずダウンロードしています。
長時間移動のお供は読書しか選択肢がなかった頃に比べて、便利な時代になりました。
『ある男』
平野啓一郎さんの小説を原作とした映画作品。
事故死した男の正体をめぐるミステリー仕立ての物語です。
正体不明の男の妻や子ども、男の素性を探る弁護士、そして男がなりすましていた男、と関係者がどんどん登場してきます。
主人公は、妻夫木聡さん演じる弁護士。
在日コリアン3世であることにコンプレックスを感じていて、義父母や妻との関係に微妙な空気が流れがちです。
事故死した正体不明の男は、窪田正孝さんが演じています。
友だちとその両親を殺害した死刑囚の息子です。
顔が父そっくりに育ったこともあり、死刑囚の息子と言われることに、大きなハンデを感じていきます。
ひっそりと生きるために、男は戸籍を交換するのです。
男と戸籍を交換した、温泉旅館の次男に仲野太賀さん。
眞島秀和さん演じる、無遠慮な長男から、けっこう悪影響を受けて、実家から逃げ出したのだろうな、と思われます。
この映画が秀逸だと思われる点は、原作小説では冒頭に登場するシーンをラストに持ってきたことではないでしょうか。
小説を読んだときは、男の正体がわかってよかった、すっきりしたという印象が残ったのですが、映画では、この冒頭シーンがラストになっていて、弁護士の将来に不安が残る、不穏な空気が漂うような終わり方です。
小説のテーマは、たぶん「ヘイト」や「生きづらさ」だと思います。
在日コリアンであるとか、犯罪者の家族とか、または、なんらかの理由があっての生活破綻者とか、世間から言われのない非難を受けている人々を描くことだと感じました。
登場人物の多くは、そういう対象になっている人物として描かれています。
妻夫木聡さん、窪田正孝さん、仲野太賀さんなど、演技派がそんな人々を演じていて、見応えがあります。
原作小説を読んでから、映画を観ると、より理解が深まると思われます。
『パレード』
藤井道人さん脚本、監督という作品です。
藤井道人監督作品に出演している俳優さんが登場するので、安定の藤井道人ワールドが展開されます。
ですが、『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』『ヴィレッジ』『最後まで行く』などの、いわゆる社会派の色濃い作品ではありません。
むしろ、ファンタジーなのですが、根底には「生きること」「死ぬこと」というテーマが横たわっているように思います。
設定は、死後、この世に未練を残した人々の集団生活です。
なんとなく『今際の国のアリス』に近いのですが、デスゲームにはなりません。
未練がなくなると、その先に行く、つまり成仏するのですが、おもしろいのは、その人物の人生を映画に仕立てて観ること。
リリーフランキーさん演じる元学生運動家であり、映画プロデューサーが良い仕事をしてくれます。
この映画で驚いたのは、冒頭に流れる津波の後の海岸線の様子です。
東日本大震災直後に、Googleマップで東北の海岸線をみたら、人体が多数流れ着いていた、という話がありました。
私自身は確認していませんが、もし津波直後の海岸線を上空からみたら、まさしくこんな状況であったろうと思わせる映像です。
死後の世界を描いているのですが、登場するキャラクターそれぞれの人生がオムニバス風に描かれているためか、まさに人生いろいろだな、と思わせられます。
ラストは、森七菜さん演じる自殺した女子中学生が生還し、大人になっても映画プロデューサーになっているシーンです。
死後の世界で経験したこと、出会った人々を描いた映画を観るシーンで終わっています。
ちょっと感動しました。
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