グレートデカップリングが進行する中、外国人材受け入れ拡大法が成立

おはようございます、面川です。

今朝、外国人材受け入れ拡大法が成立しました。

個人的には、外国人材を受け入れることは、日本にとって必要なことであり、経済や社会の活性化にはプラスな面も多いと思います。

が、しかし、多くの方が「拙速(せっそく)」と語っていることにも、うなづけるのです。

※拙速(せっそく)とは?
できはよくないが、仕事が早いこと。

ある意味、日本人の性質には合わないやり方ですが、ネット時代、グローバル社会の中、拙速であることがスピードアップにつながることもありますよね。





2019年4月から改正出入国管理法へ

今回の改正では、新たに2つの在留資格が新設されます。

ひとつは「特定技能1号」という在留資格。

一定の知識や経験を要する業務に就く人材が対象で、日本語試験(小学生レベル)や簡単な技能試験に合格した外国人に対して、最長5年の在留を認めるというもの。

もう1つは「特定技能2号」という在留資格。

こちらは、熟練した技能が必要な業務に就く人材と認められた外国人が対象です。

在留期間は上限がなく、家族も一緒に日本に来ることができます。

この点は、国民健康保険制度の資格を見直さないと、今でも破綻状態と言えるほどの健保制度が、さらに悪化する可能性大です。

⇒ 国民の権利?それとも労働者の権利?外国人労働者受け入れと健康保険

現時点で、厚生労働省は、保険適用の対象を日本国内に居住する3親等以内の扶養家族に絞る方針のようですが。



外国人留学生が日本で就職できるよう後押し?

現在、日本国内で働く外国人は128万人、労働力の50人にひとりが外国人の割合になり、2%に達します。

平成29年に留学生が日本企業への就職を目的として行った在留資格変更許可申請数は27,926人で、前年比6,028人増となっています。

そのうち許可数は22,419人で、前年比2,984人増。

どちらも前年と比べて増加し、過去最高を記録しています。

ただし、許可率は80.3%で、前年と比べて減少しています。


わたし自身、中国でビジネスをするために、かつて香港人留学生をアルバイトとして雇っていましたが、彼らには日本企業への就職意欲が強くありました。

調べてみると、就職にともなう在留資格を取得するためには、本人の能力はもちろんですが、弱小企業では、とても雇えるような条件ではありませんでした。

受け入れ企業の体力や規模が重視される傾向にあるためです。

今回の今回の改正では、「単純労働」といった分野での受け入れ拡大を狙っているようです。

大企業は、従来の在留資格基準でも受け入れることが可能でしたから、中小企業などが、外国人材を受け入れやすくすることが、今回の改正の目的のように感じます。



人手不足なのは労働生産性が低い産業?

日本の労働生産性の低さは、サービス業などの非製造業で顕著で、日本の製造業の労働生産性が低いわけではありません。

平成29年における留学生の日本企業等への就職状況について」を読んでも、外国人材の就職先の業種として、非製造業が24,418人(81.0%)、製造業が5,720人(19.0%)という結果です。

これは、日本の人手不足は、労働生産性の低い業種を中心に起こっている、ということではないでしょうか?

高度に発達したロボットは、製造業や倉庫、運輸業において導入しやすいのかもしれませんが、細かい手作業をともなう労働と置き換えるのは難しい。

小売業では、無人店舗の実験が進んでいますが、ITに馴染みのない高齢者をターゲットとした場合には、有人店舗にせざるをえず、完全な無人化は困難だと思います。

さらに言えば、手作業をともなう労働の多くを支えているのは中小企業です。


グレートデカップリングは本当に起こっているのか?

世界的にグレートデカップリングが進行する中、日本国内では人手不足というのも、なにか違和感があります。

⇒ グレート・デカップリング?ロボットに仕事が奪われる

ミスマッチが起こっている?

それとも本当に人手不足?

わたしには、本当のところはよくわかりませんが、AIが労働市場に採用されていけば、単純な事務作業のほとんどはなくなると言われています。

実際に、Amazonの大きな倉庫では、AIを搭載したロボットが荷物を運び、人間は仕分けとピッキングをするだけです。

このようにロボットを導入すると、倉庫人員は最大で9割削減できます。

農業も大規模化を目指せば、今よりも少ない人員で生産できるようになると思いますが、多様で季節感を尊ぶ日本人の食生活を考えると、大規模化にはあまりメリットがないように思います。

毎日、同じ食事で問題なし、という国でないと。


見える化と最適化

いずれにしても、外国人材の受け入れ拡大は必要なことだと思いますので、制度の見える化、そして最適化のスピードアップが必要なのではないでしょうか。

今回の法案に関する議論を見ていて、技能実習生の悲惨な現状を知りました。

「かわいそう」と同情するよりも、「なぜ?」を追求して、問題の見える化、解決策の見える化、進捗の見える化を義務付けることで、私たちにも問題が理解しやすくなると思います。

また最適化も、最初に大原則は決めておいて、部分最適ではじめはスタートせざるをえないと思います。

部分最適はムダが多いのですが、仕方がないと思います。

きっと政府は、部分最適からはじめようとしているのではないでしょうか。

そして、拙速な法案可決の裏には、別の意図があるんでしょう、きっと。


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