誤解しちゃいませんか?動画「日本の田舎、西会津町。」120本



この新聞記事を見てください。
4月5日付の福島民友新聞です。
福島県西会津町が、YouTubeチャンネルを開設して120本の動画がアップされた!と読めますよね。


ところが、実際にYouTubeチャンネルにいくと、「日本の田舎、西会津町。」というキャッチコピーのついた動画は7本しかありませんでした。

NctNishiaizu
https://www.youtube.com/user/NctNishiaizu

福島民友新聞によると、
「委託を受けた東京の業者が昨年10月~今年1月に動画を撮影した。秋・冬バーションには、5~30秒程度の短編動画約120本を収録。町民らがリポーターを務め、廃校を活用したアート施設の西会津国際芸術村や紅葉スポットの銚子の口、町内の飲食店で食べられるジャンボ天丼、全国的に高い評価を受ける菌床キノコ、栄養たっぷりの特産品「ミネラル野菜」などの魅力を伝えている」
とあります。

よくよく読んでみると、120本の動画がアップされているとはどこにも書いてはありません。
そして、公開された動画をみると、どれも結構ながいのです。
つまり短い動画を集めて、7本の動画に編集して公開した、ということのようです。


動画のチェックをしたのか疑問

この記事を書いた人は、西会津村のレクチャーをそのまま記事にしたとしても、動画のチェックをしたのでしょうか。
地方自治体が動画をつくって大量にアップするという、実にセンセーショナルな見出しですよ、120本は。

まさかとは思いますが、120本の短時間動画を編集して7本にしたことを知っていて、この見出しにしたとしたら、読者をバカにしてます。

「どうせ、動画は見られないだろう」
という気持ちがどこかにあったに違いありません。

または、西会津村の担当者に花を持たせたくて、120という数字を使ったのでしょうか。

いずれにせよ、誤解させるような見出しなのに、本文では「120本の動画」と書いていないあたり、記者のあざとさを感じます。



動画視聴のトレンド押さえてますか?

公開された動画の中には、1分を超えるものが複数あり、なかには30分近くあるものもありました。
視聴者の気持ちとかをあんまり考えていない編集となっています。

最近の動画は1分以内が主流で、それ以上の長さになると、視聴者が離脱する傾向が高まります。

だからこそ、5秒から30秒の動画120本、という記載に、
「なかなかやるな、西会津」
と感じたのです。

ところが、たった7本で、どれもロングな動画でした。
これでは見る人いませんよ、関係者以外に。
まさにザンネン!なものに仕上がってしまいました。



業者に委託する必要ありますか?

地方自治体が魅力を発信するために動画制作することは良いとして、30秒以内の動画なら、業者に委託する必要さえありません。

いま最も注目されている広告の手法は、UGC(User Generated Contents)、つまり消費者がつくるコンテンツです。

たとえば、オフィシャルな商品写真を利用した従来の広告バナーと比較してクリック率が1.7倍に上昇、クリック単価が48.5%減少し、広告効果の大幅な改善を実現した事例もあるくらいなのです。

業者に制作を依頼する前に、まずは西会津町民に限らず、西会津町を訪れた方々が撮影した動画などを使用させてもらうことを検討するべきでした。

または、1本1万円(経費込み)として、コンテンツに含まれる要素(とびら、音楽、必須コピー等)を示したうえで公募しても良かったと思います。これも町民に限らず、です。

視聴者や消費者目線がすぐれているのは、SNSで拡散されることを目的としてコンテンツを作るノウハウがあるためで、そのあたりは動画のプロよりも優れています。
なぜそういう手段をとらなかったのか、本当に残念です。



県外の視聴者を本当にターゲットにしているのか?

福島県内の同じような事例として、鏡石町のPR動画があります。
ご覧になっていただければわかりますが、これはプロに制作を委託するしかないという内容でした。

鏡石町がPR動画「牧場のあーさーを追え!」全6話を公開!


ドラマ仕立てで鏡石町内を紹介しつつ、公式キャラクターの「牧場のあーさー♪」を追いかける、というもので、脚本書いて、キャスティングして、撮影して、編集する、というプロの仕事です。

残念なことは、YouTubeに公式チャンネルを持っていないために、検索してもなかなか上位に出てこないという点です。


福島の実家に帰って、地元のニュースを見ていると、県外に対して大々的にアピールすべきことなのに、県内でとどまっているニュースがとても多いと感じます。

たとえば、福島県の農作物などの産品は、いまだに風評被害にあっています。

その打開策として、
県が主導して、コンビニ各店で福島県産のものを使用したお弁当が発売されました!
などというニュースが、ときおり流れます。

よく調べると、福島県内のセブンイレブンとかローソンとかで、福島県産品を使ったお弁当が販売される、というニュースなのです。

県内で販売したところで、何の意味がありましょう?

ターゲットは、本当のところ誰なんですか?と担当者に聞いてみたいです。

同じようなことが地方自治体のPR動画にもいえて、本当に見てもらいたい人に届かないものになってしまっています。

税金がもったいないですよね。

とくに東京をはじめとする都市部に住んでいる方は、金額は少ないとはいえ、もっと効率よく税金を使うべき、と主張してください。
交付税として、都市部の方々の納める税金が、地方の市町村に使われているわけですから。