人口減少社会に対する誤解、未曽有の人口減少がもたらす将来の危機とは?(2)

松谷明彦・政策研究大学院大学名誉教授による連載の2回目のメモです。

前回は、人口減少の意味を、具体的に解説していましたが、2回目、3回目は日本の将来に関するものです。


未曽有の人口減少がもたらす経済、年金、財政、インフラの「Xデー」(上)


日本の経済成長率が世界で一番低くなる。日本は、どの先進国よりも、労働者の減り方が大きいから。

現在の実質1.0~1.5%の成長率が、これから年々低下して、2020年過ぎにはマイナスとなり、その後は▲0.5~▲1.0%のマイナス成長が続くであろう。労働者の減り方があまりにも大きいため、技術の進歩をもってしてもカバーし切れない。

日本経済が抱えるリスクとは、マイナス成長によって日本経済自体が「衰退」するかもしれないというリスク。理由は、日本企業のビジネスモデルの後進性。他の先進国なら、もし日本のような労働者の減少に見舞われて経済が縮小しても、衰退にまでは至らない。

現在の年金制度は早晩破綻。年金制度は、急速かつ大幅に高齢化する日本には、不向きな制度。

頻繁に大幅な年金制度改定を行うため、高齢者は不安が募り、若い人は勤労意欲が低下する。

他の先進国では、2030年代の中頃にはおおむね高齢化が止まるため、長期安定的な年金制度をつくることができる。しかし日本では、産児制限を契機とした出産年齢女性人口の激減による急速かつ持続的な少子化という、日本特有の事情により困難。

米国、英国、フランスなどは、将来的に年金を負担する人が7割、もらう人が3割の水準で安定するのに対し、日本は負担する人が5割を切る計算になり、1人弱で1人の面倒を見なければなならない。若い人の日本脱出が増えるかもしれない。

急速な高齢化に見合った新たな社会保障制度を考えるべき。しかし政府は、破綻が明らかなのに年金制度に固執し、それ以外の社会保障制度を考えようとしない。

財政赤字の対応策として「増税」を選択したために、増税に次ぐ増税となって国民が離反し、財政が崩壊するかもしれないというのが真のリスク。増税で対応しようとする政府の政策選択の誤り。

公共・民間の社会インフラを良好な状態に維持できなくなり、都市部でスラム化が進行するかもしれない。

政府は景気対策といって公共投資をどんどん増やし、オリンピック招致でまたまた公共インフラを積み上げているが、2040年の東京の経済規模は2010年対比76%程度に縮小、約4分の1のビルが老朽化したままメンテナンスされず、放置される恐れがある。


日本よりもGDPが小さい先進国はたくさんありますから、私は、日本も将来はそういう風にこじんまりしていくのだと思っていましたが、実際はもっと悲惨なことになりそうです。



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