【一田 和樹】 「天才ハッカー安部響子と五分間の相棒」




天才ハッカー安部響子と五分間の相棒」読了しました。

一田作品ばかりを読んでいるわけではないのですが、今、一番刺激があって、読み始めたら一気に読み終わりたい作家さんなので、集中して読んで、そして紹介しています。


天才ハッカー安部響子と五分間の相棒 (集英社文庫)

一田 和樹 集英社 2015-01-20
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by ヨメレバ


本書は、ライトノベル風の体裁、そしてタイトルですが、ハッカー集団「アノニマス」へのオマージュだと思います。


というのも、「サイバーセキュリティ読本」において、著者はアノニマスのドキュメント本を読んで、青春群像、と評しています。

その青春群像を模しているんだろうな、と思った点は、次の通りです。

最後まで顔を合わすことはなく、ネット上で匿名で会議をしていた

本書でも、回転すし方式のチャットルームで会議をしていて、どこのだれかは知らない。

中心人物とその役割の相似

リーダーとスポークスマンが本書でも役割として出てきます。

攻撃の中心は少人数

本書でも同様のことが描かれています。

「ラスク」という名称

これはもう、ラルズセック、からなんだと思います。


本書は、ハッカーとして10年以上生計を立てている、安部響子が指揮する正義のハッカー集団「ラスク」の物語。ピカレスクというやつですね。
たぶん、悪いんだけど、かっこいいから賞賛しちゃうってやつです。アルセーヌ・ルパンとか、ねずみ小僧とか。

ですが、著者がもっとも表現したかったのは、対面コミュニケーションに重大な欠陥を持つ安部響子と、彼女がリクルートした高野肇の、ほほえましいくらいに奥手な恋愛だと思います。

この辺りは、「ビブリオ古書堂」シリーズの栞子さんと五浦くんを思い出させてくれます。
パターンも一緒で、その道の達人(女性)と、達人に導かれる者(男性)との、非常に繊細な恋模様、なんです。


本書は、できればシリーズ化していただきたいです。
それこそ「ビブリオ古書堂」シリーズみたいに。
ふたりのなれそめは描かれているので、ふたりのその後を読んでみたいですね。



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