【副島 隆彦】 「靖国問題と中国包囲網」


靖国問題と中国包囲網」を読了。

最近注目している、副島隆彦氏による、中国関係の著作です。

冒頭では、安倍首相の靖国参拝がなぜ世界からバッシングを受けるのか、を解説した「世界が靖国参拝を許さない理由」を掲載しています。

日本のメディアは内向きに体裁を整えようとするので、英語を日本語訳するときに、わざと間違った訳語を使用する傾向があります。

たとえば、北朝鮮を交えて関係国が協議しよう、というのは「6か国協議」という訳語があてられていますが、英文では「Six Party Talks」なんです。

このことは、2008年にこのブログで「Only talk, not negotiate」というタイトルで書いておりましたので、協議という意味はない、ということだけを書き添えておきます。

つまり、副島氏もこの点を指摘しているほか、第二次大戦後の世界体制についても言及しています。

中国を批判するときにも、第二次大戦後の世界体制をひっくり返そうとする野心が中国にはある、というような言い方が、英語圏のジャーナリズムでは使われます。

それだけ重要な、世界的な認識だということでしょうか。

この、第二次大戦後の世界体制、を理解しないから、日本(安倍政権)は、中国と戦争する気なのだ、と世界中のマスメディアに報道された、と著者は説明します。


第2章以降は、中国と香港、ロシアとの関係などを網羅しています。

香港と、国境を挟む、深圳の話はエキサイティングです。
お金が自由に国境をわたって香港にやってくる、そして、(顧客情報を漏らさない)口の堅いHSBCに預けられ、その後世界中にチャイナマネーが投資されている、というわけです。

また、中国の政治家が、「確信が持てない時は、市場が決める」という考え方に変わった、というジム・ロジャース氏の考察を取り上げています。

この点は、先週開催されていた全人代後の、世界中のメディアが数百人くらい集まった李克強首相の会見が証明したと思います。

最近、中国の銀行がデフォルトするのではないか、という憶測が、当の中国で大きく取りざたされていましたが、これに対して、「一部のデフォルトは避けられない」と発言したからです。




著者も指摘していますが、中国のことを敵視して、最初から付き合わない、情報も見聞きしたくない、という態度は間違っていると思います。

中国人とビジネスして、彼らから大きな売上を上げる(巻き上げる)、くらいの気持ちになったほうが良い、ということを本書は示しているのではないでしょうか。

自分の資産が心配な方はもちろんですが、中国や韓国は苦手、という方にこそ、お読みいただきたいです。


靖国問題と中国包囲網

副島隆彦 ビジネス社 2014-03-07
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