「中国共産党 支配者たちの秘密の世界
本書は、現代中国社会で起こった事象・事件を当事者にインタビューしつつ、その背後にある中国共産党の実態を解説するものです。
中国共産党 支配者たちの秘密の世界 | ||||
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2010年に発刊した本書は、英語圏はもちろんのこと、中国進出している欧米企業や研究者が、手に取り読んでいると思われます。
なぜなら、わたし自身もカナダ人研究者から教えてもらっていたものだからです。
日本語訳が出ていたとはつゆ知らず、やっと読み終わりました。
本書を読んでいて、気になったことはいくつもあります。
たとえば、先日の全人代で公約していた汚職撲滅。なぜ中国では地方政府の汚職が減らないのか?
実は、中央の共産党は地方政府を完全掌握していない、という点にその原因が求められます。
私たちから見て、中国は、完全な中央集権国家のように思いがちですが、中央が掌握しているのは省や1級都市(北京や上海などの大都市)までで、その下になると、全くコントロールできない、というのです。
それは地方の共産党、中でも組織部(もちろん中央にもあり、ここが最大の権力を持っている)と呼ばれる部署が人事権を持って、君臨しているためなのだとか。
人事権のない人の言うことなど聞かない、とは世の常です。
よって、中央政府がいくら指導しても、地方役人の汚職がなくならないのです。
「役人になる本来の目的は、金持ちになることである」というのが、中国の常識なのです。
なかでも地方税務局は人気の職場です。
地方のほうが裁量権が発揮できますからね。
ちなみに、汚職役人が投獄されるのは3%。
ローリスク・ハイリターンのビジネス、それが地方役人になることです。
また、地方政府同士がライバル、これは日本人にも理解できますが、そのためにGDPなどの数字を操作する、というのはやりすぎと感じます。
中国では最初に誰かが報告すると、それを上回る数字で次の人間が報告する、ということになります。
しかし、何よりも驚いたことは、毛沢東時代に4000万人もの人々がわずか3年間で亡くなっている、という事実です。
共産主義が大量虐殺を行った歴史は各所にありますが、この事例は経済政策の失敗によって餓死したものと考えられています。
とはいえ、毛沢東をいまだに尊崇する中国共産党にとっては、この事実を認められないことも事実なのです。
著者は、本書を通して中国共産党の様々な面を詳細に解説しています。
そして、著者がたどり着いた結論は、中国共産党はあらゆる局面に対して柔軟に対応できる能力を持ち、それを高めている、ということです。
欧米はじめ日本でも、中国共産党の衰退を予測する話がありますが、著者はこれらを否定します。非常に説得力があります。
中国でビジネスするのは、今もこれからも必要なことです。
全人口の5人にひとりが中国人の今、彼らを無視することはできません。
それなら、理解を深め、彼らの考え方や言動の意味を知ることが、まずは第一歩だと思います。
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