アセットレス

昨日は国際フォーラムで開催されていた「Cloud Computing World Tokyo 2010」に行ってきました。
行ってきました、というよりも、IIJの鈴木社長の講演を聞きに行ったというほうが正しいですね。

鈴木社長のお人柄を知るには著書の「言葉の水割り」をお読みいただくのが早いと思いますが、昨日の講演のキーワードは”アセットレス”だったと思います。
アセット(asset)は価値のあるもの、有用なもの、という意味ですが、一般には”資産”という意味で使用されています。
鈴木社長の意味するところは、資産がない、ではなく、積極的な意味で資産を持たないこと、それがクラウド・コンピューティングである、ということではなかったかと思います。

私自身は、お金がない会社を経営していることもあり、クラウドサービスは積極的に採用すべき、と考えています。実際に利用してみると便利で安い反面、若干融通が聞きませんが、安いのだから仕方がない、と思っています。
鈴木社長も揶揄気味に語っておられましたが、セキュリティについても、どこまで厳重にしても完全ということはありません。

しかし、Googleの技術者と日本企業の技術者とを比較したとき、どちらが優秀かといえばGoogleでしょ、というのが私の持論なので、セキュリティについても全く気にせずに利用しています。少なくとも私自身がクラウドサービスを利用していて被害にあったということは、今のところありません。

今、書いていて記憶がよみがえってきましたが、10年位前にも同じようなことを書いた記憶があります。
それはインターネットショッピングやオンラインバンキングについて、私自身がネットショッピングでトラブルになっても結局はカード会社が処理してくれたことなどを含めて、被害にあったことがない、という話です。ネットショッピングは10年以上は経験があり、海外サイトでよく購入していたのですが、全く大丈夫でした。
オンラインバンキングもシティバンクに口座を開設して以来なので、こちらも10年以上の経験がありますが、全くトラブルに会ったことはありません。

クラウドサービスも同様のことなのかもしれません。

キーワードのアセットレスに戻ると、資産を持たない勇気こそがクラウドサービスの発展につながる、と。
確かにその通りで、システムを買ったりすると、安くて数百万、企業規模が大きくなれば数千万から数億は当たり前です。しかもそのシステムが確実に使えるかというとそうでもないことが多く、結局は利用しなくなったりすることもあります。
が、買ってしまった資産は使いなさい、という業務命令のもと、仕方がなく利用し続けたり、古い技術の上に乗った自社固有のアプリケーションがあったりすると、これを踏襲して新しい基盤に乗せ換えたりしようとして、無理なカスタマイズに走るということになりがちです。

経営者がシステム利用について理解がないからこういう結果を招くのですが、この点について鈴木社長も繰り返し言っておられました。アセットレスにすることで、過剰なシステム投資を回避することができ、そして会計上も身軽になれます。

お金のない当社の場合、GoogleとZOHOMS Office Liveを組み合わせて利用しています。
それぞれに良いところ、悪いところもあるので、結果として使えるところを使っているわけですが、これもGoogleだけ、MS Office Liveだけ、となると、かえって使い勝手が悪くなります。

しかし、日本人と話をいていると、必ずどこかに集約させたくなるようです。
その原因のひとつが、インターネットの利用経験が少ない人に合わせること、にあるように思います。若い世代には「やれ」で済みますが、上司が「あちこちログインするのは面倒だ」などと言えば、仕方なくひとつを選択しなければならなくなるためでしょう。

当社の場合は、私が一番上で、しかも一番ネットを利用しているので、誰も文句を言いませんが、慣れればそのほうが良いことに気付くので、あんまり問題になりません。

つまるところ、経営者の考え方ひとつなのかもしれません。

鈴木社長の講演では、日本はクラウドに馴染まない風土があるような印象を語っておられましたが、あの場にいた皆さんも、同様の感想を日々お持ちなのではないかと思いました。

それにしても、若い人が会場に少ないのにはちょっと驚きでした。日本のIT業界は確実に高齢化しているんですね。

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