自動車ビジネスに未来はあるか?


自動車ビジネスに未来はあるか?エコカーと新興国で勝ち残る企業の条件 (宝島社新書)」を読了。
車が売れない、といわれて久しい日本の状況を含め、なぜ自動車ビジネスがかげりを見せているのかについて、北米市場を中心に詳細な分析が行われており、今後の自動車ビジネスへの処方箋も示しています。

また、北米市場に日本の自動車メーカーが進出している経緯などは、歴史の1ページともいえ、当時を髣髴とさせる臨場感があります。
私の周辺には、この時代の関係で日本の自動車メーカーと一緒に北米に出て行った企業に勤務する友人などが多く、一層の親近感があります。なるほど、こういうことだったのか、と今更ですが、やっと理解できた気がします。

北米でトヨタが売れる以上に生産してしまっていたことにより、リーマン・ショックが大きく影響したこと。さらには、今後は海外拠点の拡充、技術移転などを含めた高度な人材の海外派遣など、が明らかに増加するだろうと予測されています。

簡単に目次を紹介しておきましょう。

第1章 米国金融バブルに踊った自動車産業

第2章 ビッグスリーはなぜ急激に崩壊したか?

第3章 自動車工場で何があったのか?

第4章 自動車販売の現場で何が起こったのか?

第5章 新興国市場で自動車メーカーは復活できるのか?

第6章 エコカーで自動車産業は再生するか?

第7章 自動車産業が「20世紀」と決別する日


実は私の弟は自動車ビジネスの一端を担う企業に勤務しています。
エンジニアですので、現地工場の品質管理を含めた指導を行うために、毎年のように海外拠点に長期出張しています。まさしく本書が指摘する事態になってきているのです。

弟によると、ヘッドクォーター以外の生産拠点は今後アジアにすべて移転する可能性があり、もしも日本企業で働きたいのであれば、タイやベトナム、インドネシアなどで働くことが前提になるかもしれない、と言っています。
一方、日本人を指導するより、現地の最高学府を卒業した人材のほうが質が良く、やる気もあるため、教えていて気持ちがいい、とも言っています。

本書は自動車ビジネスの現代史としても楽しめる一方、20世紀の経済を牽引してきた産業すなわち経済構造でもあるので、「希望を捨てる勇気」とあわせて読んでいただくと面白いかと思います。

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