SOUR



今日の日経産業新聞「流行ウォッチング」欄で取り上げたのは、PV「日々の音色」が話題になっていると以前書いたバンドSOURです。
写真はSOURの皆さんで、左からSoheyさん、hoshijimaさん、KENNNNNさんの3人です。
ビデオをどうやって作ったのか、ということについては本紙をお読みいただくとして、取材の際にうかがったそのほかのことについてここでは書き進めたいと思います。

取材させていただいたのは8月18日、原宿でのことでした。このあと、9月30日に予定されているライブに関係して取材を受けるとのことで1時間弱の時間しかありませんでしたが、彼らの音楽のバックグラウンドを知る上で貴重な話を聞かせていただきました。

SOURというバンドは、3人一緒にどこかへ出かける、ということがないそうです。ライブ終了後も、各自そのまま帰り、特に打ち上げというものをやったことがない、と語ってくれたのです。3人はそれぞれ仕事を持ち、平日はビジネスパーソンとして働いています。ライブなどは週末になるため、平日の夜が練習や曲作りの時間になるそうです。週に5日は会っている、というのに、この淡白な関係なのだそうです。

そもそもこのような話になったのは、彼らがどのような音楽について普段語っているのか知りたいと思って質問を投げたのですが、自分が好きな音楽の話をすることはないし、そもそも3人ともバラバラなので話が合わない、という言葉が出たからでした。
「自分たちに限っては、音楽性が合わないから解散、ということはないですね」とSoheyさんが言うと、KENNNNNさんが「社員みたいなものだから」とかぶせます。
話が進んでいくと、今度はhoshijimaさんが「それぞれ持っている理想を部分的に実現させるようなコラージュみたいな感じ」と言います。

簡単にまとめると、SOURという組織でそれぞれの業務や役割を淡々とこなす対等な関係であり、それぞれの音楽的理想をすり合わせによって実現している、落としどころをそれぞれがわかってやっているバンドなのだ、ということになります。そういう意味で大人でプロフェッショナル、そして暑苦しくない心地よさを感じました。まさに「日々の音色」の印象。ちなみに「日々の音色」はレコーディングの直前に、締切に迫られてできた最後の1曲とのことでした。肩から力が抜けた感じを受けるのもそういう状況下にあったからなのかもしれません。

取材を通じての印象は、スポークスマンのSoheyさん、hoshijimaさんはブレーン、KENNNNNさんは思想的中核、という感じです。

メジャーだろうがインディーズだろうが、自分たちがやりたいことを自分たちの言葉で届けたい、と考えるSOURというバンドはシンプル族の代表だろうなと思いました。

ところで、ここからはPV制作に関するコメントを掲載します。どうやって制作したのか、興味のある方も多いことだと思います。私はこのコメント全文を読んで、なんと素晴らしい制作チームなのかと思いました。
そこで、私が編集してしまうのも申し訳ないので、いただいた全文をそのまま掲載しようと思います。

-----------------------------------------------
日々の音色

director: 川村真司 + Hal Kirkland + ナカムラ マギコ + 中村将良artist: SOURclient: Zealot Co., Ltd / Neutral Nine Records

> >> ・本作品の構想のきっかけ

企画を考え始める段階で、まず予算がないということと、バンドが日本にいて僕らがニューヨークにいるという距離的な課題がありました。ただ、逆にその制約を活かした企画を考えられないかと発想を切り替えた時に、今回のweb camを使ったアイデアを思いつくことができました。

> >> ・制作期間、ツール

制作期間は企画構想から完成までで約3ヶ月ほどかかりました。僕らスタッフが4人とも昼間は別の仕事をしていたり、相当な人数に演技指導と撮影をしなくてはいけなかったため想像以上に時間がかかりました...。ツールはパソコンのweb camと、スクリーンキャプチャのためのソフトishowU、それと編集のためにAfter EffectsとFinal Cutを使用しています。

> >> ・実際の制作の進め方

コンセプトが決まってから始めのひと月は、様々なサイズのグリッドを出力してそこに考えられる限りのアイデアをどんどん書き起こしていきました。その中で良さそうなものを今度は簡易的にアニメーションにして曲とのタイミングを計り、それをもとに細かい振り付けを検証するため一度自分たちを撮影して編集して、ビデオのプロトタイプを作成しました。そのプロトタイプを撮影前にキャストに送って振り付けを練習をしてもらいました。
実際の撮影のときもそのビデオを見ながら演技をしてもらい、ishowUを使ってweb camを通した映像を録画していきました。撮影までの行程がたくさんあって大変でしたが、ガイドのビデオがあったおかげでみんなからより精度の高い演技を引き出すことができました。
その後はバラバラの素材を編集で定められたグリッドにはめていき、あまりにも動きがずれている箇所などを微調整していきました。それぞれのキャストの個性や、アナログ的な緩さを大切にしたかったので、なるべく編集にたよらず実際の演技で動きがシンクロすることを重視して作業を進めました。

> >> ・苦労した点

ともかくどのシーンも複雑な構成でできているので、企画を煮詰めたり、キャストを集めたり、撮影のスケジュールを調整したり、といったプランニングの部分でまず相当時間を費やされました。
あとは実際の撮影の際もガイドがあるとはいえ、どのシーンもなるべくタイミングを合わすために各キャストごとに数十テイクも撮影しなくてはいけなかったのが大変でした。そうやって80人近く撮影しているので、その後の編集作業ももちろん苦労しました...。


> >> ・MVに込めた想い

"色々な価値の氾濫する世の中で、本当に大切なものは何?全ての違いを受け入れたら自分自身の音色を奏でよう"
この歌に込められたそんなメッセージが、今の時代の気分にすごいあってるなぁと感じています。一人一人の個性を引き出しつつ、それらをつなぎ合わせて一個の大きな表現を作りあげる、今まさにネットで起きていることの縮図を今回web camを使う事によって表現できたように思います。そうした今の時代だからできるようになった自己表現や、人との新たなつながり方の可能性を感じてもらったり、でも結局はどんなに技術が発達しても最後は人と人とがつながれることがいつの時代も変わらず一番うれしくて大切なことなんだなぁって見た人が想ってもらえるとうれしいです。
-----------------------------------------------

コメント

  1. 日々の音色がアップされた当時にこのバンドを知りましたが、このような動きはこれからのリアルとヴァーチャルの新たな価値の生み出し方を象徴しているように思います。

    日経産業新聞の記事がおもしろくて、このブログをみつけたのですが、むしろこのブログの内容を記事で読みたかったです。

    返信削除

コメントを投稿