奥田英朗氏の「オリンピックの身代金
読み始めるととめられなくなって、一気に読んでしまいました。
昭和39年のオリンピック前夜の様子が手に取るように感じられました。
ただ、設定のためでしょうが、全体に印象が暗いのは否めません。
一般の人たちの興奮とは一線を画した、最底辺の労働者や被差別者はこういう気持ちだったのかもしれない、とも感じます。
主人公は東大大学院に籍を置くエリートですが、事情があってオリンピックの工事現場に人夫として働くことになります。
この経験を通じて考える日本の労働構造の歪みなどは、そのまま現在の派遣労働者の様子にも通じます。
本書のなかに何度も登場した「世界の一等国」というフレーズは、今を生きる私にはなんだか気恥ずかしい言葉でした。
何等国だって関係ない、という気がしますけど、これは豊かになった日本しか知らないから言える傲慢さなんでしょう、きっと。
話は変わりますが、民主党の反対でオリンピックの東京招致になにやら暗雲が漂っているようです。
当時のことをよく知っている年代の方々は、別にオリンピックなんて、と批判的ですが、私自身はまだヨチヨチだったので、一度はオリンピックというものを自国で開催する気分を味わいたいと思っています。
冬季はいくらやってもしょせんセカンドですから。
オリンピックの身代金 | ||||
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