今日は、朝から「全日本患者安全組織文化学習支援財団」の代表理事を務めておられる松本 尚浩 先生と、facebookでメッセージのやり取りをしておりました。
その中で、先日受けたプレート除去手術について「痛みはありませんか?」と尋ねられました。
痛みが強いわけではありませんが、若干の癒着状態にあって、毎日マッサージして緩和してきます、と返信しましたら、痛みは脳の記憶に影響される、ということについて、最新の情報を教えていただきました。
基礎から学ぶ麻酔科学ノート
痛みはどこで感じるか (荻野 祐一 群馬大学医学部附属病院麻酔科蘇生科 助教)
ヒトの痛みは「思考」であり「感情」
このレポートによると、①ヒトの痛みは「感覚」(だけ)ではなく「思考」や「感情」である
②痛みに特異的な脳領域はないだろう
③いわゆる「痛み関連脳領域」は古くなってきており“Neuromatrix”1)と呼ぶべだそうで、痛みを感じるのは痛覚だけではなく、感情や思考など、脳の働きに大きく関連しているのだそうです。
き
昨年、手首の骨折の手術を受けるときにも、松本先生から「痛みを我慢してはいけません。
その痛みを脳が記憶してしまうと、リハビリに支障が出る可能性があります」とアドバイスをいただきました。
なので、術後数週間、痛み止めを飲み続けました。
おかげさまで、リハビリは絶好調で、骨折前とまったく変わらないくらいに回復しました。
記憶されると良くない影響を与えかねない痛みですが、この痛みに関する研究は、21世紀になってから飛躍的に発展してきたのだそうです。
つまり、ここ10年くらいで、大きく認識が変わった分野といえます。
「痛みはどこで感じるか」より |
「ねたみ」感情も「痛み関連脳領域」の活動
ふたたび引用させていただくと、パラダイムシフトのきっかけとなった金字塔的研究は、2003年にScience誌に掲載された研究、「社会的疎外を受けているときは、身体的痛みと類似の脳部位が活動する」というものです。この研究では、MRI室内において、被験者に疎外された孤独感を感じさせる状況下に置いた時の脳活動を撮ったところ(「心の痛み」とでも言えばいいのか)「痛み関連脳領域」の活動が見られたのです。(中略)
近親者との死別、社会的に不当に扱われた場合にも、「痛み関連脳領域」が活動することが報告されています。2009年には高橋らが「ねたみ」感情も「痛み関連脳領域」の活動であることを報告していますが、この研究の特筆すべき点は「ねたみ」(痛み関連脳領域の活動)と、他人の不幸を願う気持ち(報酬系領域の活動)が正の相関を示している点です。(中略)
痛みと報酬の関係は、いわば天秤のようなバランス関係にあり、われわれ人間は常に、この平衡を保とうとしているのではないでしょうか。とあります。
しかも、ねたみと、他人の不幸を願う気持ちがセットになっているというのです。
報酬系の脳へのご褒美が痛みを軽減する
本論では、報酬系の脳にご褒美を与えると「痛み関連脳領域」の活動が低下することがわかってきていること、脱水症状が痛みに敏感にさせることもわかってきているようです。慢性的な痛みは、この痛み系と報酬系のバランスが壊れた状態であると仮定されるそうです。
慢性痛患者には特有の過覚醒状態、痛みの破滅的思考、不安・うつ症状がともなっているそうで、これらを理解するためには、脳をもっと研究する必要があると結論しています。
ケガでもしないと、なかなか触れることのない情報ですが、非常に興味深いと思います。
それから、「全日本患者安全組織文化学習支援財団」では、ただいま「患者安全の取組等に関するアンケート調査」を実施しています。
医療サービスのなかに潜む危うさに警鐘を鳴らしている同財団の調査です。
ぜひ、ご協力ください。
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