【阿部 智里】 「烏に単は似合わない」




1991年生まれ、デビュー作「烏に単は似合わない」で松本清張賞を受賞した、という触れ込みに惹かれて購入。

久しぶりに一気読みで読了しました。
設定がおもしろいので、とても魅力的な作品です。

烏に単は似合わない (文春文庫)
by カエレバ

サッカーがお好きな方ならよくご存じの、「八咫烏(やたがらす)」が支配する国、という設定の物語。
大和言葉を使い、金烏と呼ばれる天皇のような存在、その後継ぎとなる”日嗣の御子”の妃選びが本作のメインストーリーです。

八咫烏が登場した時点で、読者はファンタジーノベルかと思ってしまいます。

読み始めると、小野不由美「十二国記シリーズ」のように、設定がしっかりして、ファンタジーとしてもかなり期待できそう、という印象を持ちます。

十二国記 Blu-ray BOX
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一方で、妃選びの宮廷が舞台、ということもあり、源氏物語の風味もあります。
とくに大和言葉を多用しているので、平安文学の香りがぷんぷんします。

が、しかし、松本清張賞を受賞したわけですから、事件が起きるわけです。
死人が出ます。

そして、ほとんど姿を見せなかった”日嗣の御子”が終盤になって登場。

探偵よろしく、事件を解明していくのです。

その様子は、明智小五郎か、はたまた名探偵コナンが現れたかのようです。

そして、女だらけの登場人物ならでは、の事件の背景が語られていきます。



本作は、この後につづくシリーズの土台となる作品です。
そのための設定描写、人物描写が豊かに表現されていて、その世界観が読む者を魅了します。

そして、シリーズを構成するための伏線があちこちに転がっていそうです。

これはもう、どんどんシリーズを読破せねば、と思いまして、アマゾンでシリーズ全作をまとめ買いしてしまいました。


ファンタジーではありますが、現代的な源氏物語、という感じですので、ファンタジーになじみのない方でも、手に取りやすい作品だと思います。

そして、まだ20代前半の作者、阿部 智里さんに今後も大注目です。


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