「官のシステム (行政学叢書)」 を読了。
本書は、行政学という学問をなさっている先生の著書ですが、昨今の行財政改革議論の根幹をなす議論の芽がすべて含まれています。
また、中曽根時代からの行政改革議論等についての検証も行われており、現代史の側面からも一読の価値がある著作です。
それ以上に私自身が興味深く読んだのは、第2章「変わらぬ大部屋主義の職場組織」、第3章「規格化された組織とその管理」などの人事における官のシステムでした。
日本の大企業にも通ずる大部屋主義の仕事のやり方が、ややもすると責任の所在が曖昧になりがちであることや、場の空気に左右されて、自ら率先して新しいことや革新的なことをやらなくなってしまうなど、大部屋主義の弊害が説かれています。
また、総括整理職や分掌職という調整・補佐・助言・参画等を行うという役職については、実は仕方なく作ったらしいです。
というのも日中戦争に突入する昭和12年頃から、戦地に赴けば死ぬだろうということで、通常の2倍の採用を行ったのだそうです。しかし、なぜか1割くらいしか死なないで戻ってくるため、仕方なく役職を作り、最終的には公団などの外郭団体を作らざるを得なくなった、という証言を載せています。
今の役人天国の基礎はこういうところにもあるのか、と笑ってしまいたくなるような証言です。
また、プラン(官にとっては自らの仕事の原典である法律の原案)を複数作ることがなく、たった一つの原案で調整してしまう、というやり方にはあきれます。
つまり、選択肢を提示するのではなく、自らがやりたいことを法律にしてしまうことで、自らの部局・課の存在意義を固めるわけです。
政治家に法律の立案能力がないことは自明にしても、選択肢としてのA案、B案くらいは作るのかと思っていましたので、これじゃダメだな、と感じました。ビジネスにおいては最低でも3案くらいは作り、経営陣に判断してもらうことが、当然のやり方だと思います。そういう意味において、官の驕りが感じられるやり方です。
他にも書きたいことはたくさんあるのですが、本書には人事体系を検討する際に参考になる事例がとてもたくさん含まれています。
経営を考える方、人事を考える方などにお勧めです。
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