結婚DCF

インベストメントバンカーとして香港で活躍していた友人と久しぶりに話をする機会がありました。
彼女と、彼女の補佐役(私が紹介した友人です)と3人だったのですが、彼女たちは偶然にもどちらも英国人の夫を持っています。
話がややこしいので、インベストメントバンカーの友人をAさん、紹介した補佐役の友人をBさんとしましょう。

普段は全く個人的な話をしないAさんですが、近しい関係にある者だけだったからでしょうか、結婚の話が出てきました。Aさんのご主人はAさんより1歳年下です。
しかしAさんは「Bさんは4年もGainしているんだから、私よりすごいわよ」と言い出しました。

さすが元インベストメントバンカーです。ディスカウントキャッシュフロー(Discount Cash Flow)に基づく発言でした。
要は、年齢の差を投資期間として設定した場合、その期間が長ければ長いほどリスクが高くなり、現在の価値(つまり対象女性の価値)を下回ることになるのですが、それ以上に魅力のある投資案件であった結果の結婚である、ということです。

この話を理解するためには、DCFの式が必要です。

現在価値=[将来のキャッシュフローつまり将来得られる価値÷(1+割引率つまり期待する利率)]べき年数

DCFは投資結果として将来得られる価値を、投資予定の金額と比較するための計算方法です。
ですから、現在価値が投資予定の金額より高ければ投資してよい、ということになります。

割引率を10%とすると、
Bさんの価値>[4年後の将来価値÷(1+0.1)]⁴
とBさんのご主人が解釈したことになる、とAさんは発言したのです。

なるほど、と思いました。
最近年下男性と結婚される女性が多いのも、案外このDCFによって説明がつくかもしれません。
たとえば、年上のキャリアのある女性と結婚する年下男性の場合、結婚相手の女性の将来年収を将来のキャッシュフローとし、死別までの時間を投資期間とします。

厚生労働省の世帯主の世代別平均所得では、20代は306万円、30代は550万円、40代は約700万円、50代は735万円、60代は530万円、70歳以上が430万円です。
これは世帯の全所得なので、ひとり分として考えて、30代は80%、40代以上は70%として考えるのが妥当でしょう。

40歳女性が79歳まで生きるとして、将来年収は、700万円×10年×0.7+735万円×10年×0.7+530万円×10年×0.7+430万円×10年×0.7=1億6765万円となります。

一方の男性は12歳下の28歳とします。
この男性の将来年収は、女性と死別するまでの40年と設定すると、
306万円×2年+550万円×10年×0.8+700万円×10年×0.7+735万円×10年×0.7+530万円×8年×0.7=1億8025万円

単純計算では男性の将来年収が高いのですが、ここで結婚を決心する場合の気持ちを割合にして見ます。

決心要素(100%)=お金(30%)+容姿(30%)+性格(40%)

と設定してみます。
これをもとに割引率を考えると、
30%×1%(銀行利息)+30%×70%(満足度)+40%×70%(満足度)=51.3%(割引率)

男性の投資金額は将来年収の1億8025万円なので、これを女性の現在価値が上回れば、投資として大成功と言ってよいわけです。
女性の将来年収を将来のキャッシュフローとして、[1億6765万円÷(1+0.513)]40乗 という式が成り立ちますので、すごい金額になります。

もっともこんな計算をしなくとも、男性のほうが女性よりも離婚や死別によって高いストレスを受けるという結果もありますので、男性にとっては、誰かと一緒に安心して生活することそのものが、大きな利益なのかもしれません。

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