香港セントラル占拠、しかし高級ブランドの将来はバラ色?

Trouble in store -Luxury lags in Hong Kong but new book has high hopes for China’s shoppers- という記事が、Week in China にありました。

おもしろいので、簡約して紹介します。



何千人もが道路を封鎖し、コショウスプレーや催涙ガスを使用する警察、さらには雷や豪雨にも対立しています。

香港の路上の様子に、市民が不安を抱いた数日後、ティファニーやヴァン・クリフ&アーペルスが販売を止めたのも不思議ではありません。

しかし、中国からの訪問客は、香港のショッピングモールや旗艦店でのショッピングにいささかも興味を失ってはいません。高級ブランドが問題視しているのは、抗議運動が、もっとも購買客が来店するエリア近くで行われていることであり、ブランドのセールスが現に下がっていることです。

事実、8月の香港の小売り売上高は、年初より3.4%上昇し、51.5億ドルに達しましたが、高級品の売上高は6.1%減少しました。

高級ブランドは、ここ数カ月間の中国人旅行者の減少によって売上が低迷しています。抗議活動のために、旅行を先延ばしにしているためです。
ある旅行社は、中国人ツアーは3分の1に減ったとロイターに語り、またある旅行社は、国慶節シーズンの中国人旅行者は半減するだろう、とサウス・チャイナ・モーニング紙に語っています。
(この記事は10月3日に掲載されています。)

高級ブランド幹部は、ブランド天国・香港という表何を取り戻せるかどうか、頭を悩ませています。さらに、彼らは、中国人買い物客の消費意欲が減退するかもしれないことも恐れています。


緊縮キャンペーンを非難?

高級ブランドは、通りを封鎖するという残念な結果になったことと一緒に、プラダ、グッチ、LVMHのようなブランドの利益が落ちたというアナウンスがレポートされていました。

多くのアナリストは、習近平による、公的機関やビジネスにおける贈答を禁じるキャンペーンを、批判しています。

中国人による高級ブランド購入の半分が贈答によるものとみられていましたので、ぜいたくな出費や腐敗に対する北京の弾圧は著しい影響を与えています。
なかでも、時計や宝石は売上が40%も落ちています。


長期的見通しはバラ色?

反浪費キャンペーンがいつ終わるのかは、誰にも分りません。
しかし、Erwan Rambourg の The Bling Dynasty: Why The Reign Of Chinese Luxury Shoppers Has Only Just Begun によると、高級ブランドの未来は明るいようです。

Rambourg は、HSBCの消費者や小売業のリサーチに関する共同責任者です。彼の本では、中国における高級ブランド消費者のタイプを紹介しています。中国高級ブランドシーンにおける消費パターンを特徴的なブランドやマーケットサイズを予測して、物語的な色付けをして描いた有用なものです。エントリーレベルからブランドエリートまで、世界中の高級ブランド客を5段階のピラミッドに置き換えました。

高級ブランド客は、世界的な消費において3分の1以上を占め、貢献しています。中国人は他の国々よりさらに消費しています。
その規模から、中国人が高級品に要求することも多様化しています。Rambourg は、中国と日本を比較することにより、ピラミッド構造をつくりました。


山田昌弘教授が命名した「パラサイトシングル」、主にOL層が、ブランド消費や旅行に自らの収入を費やすことができたことが、1990年代のブランド熱に至ったと、Rambourg は描いています。10年前、ルイ・ヴィトンの売上の半分が、日本人によるものでした。

しかし、OLも年齢を重ね、ブランド熱が冷めています。そして困ったことに、彼女たちの代わりとなるニューカマーは見当たらないのです。

中国において、マーケットは良い感じに見えます。なぜなら、需要はより多様であるからです。
より貧しい都市においては、スターバックに行くことで興奮しますが、最も経験豊富な富裕層は、上海で最も高級なブティックに行くときでさえ、無関心を装おうとします。

全体的な成長予測はあまりに固そうにみえます。
最低所得水準が23,800ドルからのベンチマークは、約7500万人の高級ブランド買い物客が次年度は存在するだろうと言えます。2025年には、最低所得水準は30,500ドルに上昇するとみられ、買い物客は2倍の1億5000万人になり、高級品に費やす金額は3倍という、著しい成長が見込まれます。

そのためピラミッドは、既存顧客がより高価なレベルに移り、ベースレベルには新規顧客層が入ってくることにより、一層大きくなってその形が保持されていきます。

「2015年のピラミッドは、実際のところ、氷山の一角に過ぎない」とRambourg は予測します。


香港にとって良いか?

需要の急増は、ラグジュアリーの世界に置いて、中国人影響力のもう一つの重要な側面を強調しています。高級ブランドの顧客の35%は国内に存在するのですが、中国ではわずか12%しかいません。

多くの中国人は、国外の店舗で買い物をしており、この傾向は、海外旅行の始まりとともに加速していることです。

香港の成功が、最も良い事例です。700万人の都市が、13億人の中国本土と同じセールスをあげているのです。中国人観光客の60%はハンドバッグを、80%は腕時計を香港で購入しているといわれます。

中国人観光客にとっての香港の魅力は、広く理解されています。観光客は、購入した品物が偽物ではないことを確信することのできる、海外ショッピングというステータスを喜んでいるのです。
そして、ほとんどの製品において、彼らは30%の関税を節約できるのです。

ニールセン中国の高級品買い物客調査によると、97%が海外旅行の目的はショッピングだと回答しています。ショッピングは熱狂的に見えるかもしれないけれども、実際には非常によく組織化されています。約90%の買い物客は、旅行前にどこで買い物をするか計画しており、38%はどの製品を買うかまで正確に知っているのです。

Rambourg は、中国人買い物客が香港の異なる地区を目指す様を、ピラミッドによって効果的に説明しています。

1.九龍半島のカントンロードは、はじめてのツアー客に人気が高い

2.香港島のパシフィックプレイスは、控えめであまり熱狂的ではない買い物客が気に入っている

3.コーズウェイベイのハイサンパレスは、ヒップな経験をしたいと思う、特に若い観光客向け

これらのことは、多くの中国人が買い物の目的地のひとつとして香港を見ていることを示しています。日本は、円安でさらに魅力的になっていますし、台湾には、中国からの利便性と文化的なつながりから、さらに親近感があります。韓流ドラマやポップミュージックの影響で、韓国はもっともファッショナブルなニュースポットになっています。

香港が、高級品のハブとして利益を上げ続けていたとしても、アジアの他都市も、中国人買い物客のシェアを拡大し続けるでしょう。

中国人ジェットセット族は、パリやロンドン、ヴェニスでトップブランドを買うことでしょう。
しかし、ヨーロッパにおける高級品売り上げは、強いユーロの影響で弱まっており、小売店は強気の価格にしており、中国本土で販売している同じ製品よりも高いことが知られています。


ラグジュアリービジネスにおける更なるトレンドとは?

中国の高級品市場はメンズから始まりました。
しかし、ギフト市場が急速に減退しているため、大きく変化しています。

将来的にはよりレディース市場が拡大するでしょう。ジュエリーやハンドバッグブランドには朗報ですが、腕時計ブランドには歓迎しかねるかもしれません。

もし数百万人の中国人が高級品を買い始めたら、より高い価格を正当化し、高級であると認めるだろうか?

これに関連して、8年間LVMHのマーケティングマネジャーであったRambourg は、韓国におけるルイ・ヴィトンの問題を思い出します。それは「3秒バッグ」と呼ばれるほど、ソウル市内のいたるところでルイ・ヴィトンが見られたことをさします。

中国人が急増することによる要因は、流行しすぎることがブランドの危機とみられることだろう。

ひとつの回答は、最高の価格で、制限された顧客に販売することによる希少性を作り出すことです。つまり、トップエンドの宝石商レビエフやグラフなどによるいくつかのアプローチです。

ブランドのためのもう一つの戦術は、彼らの遺産を強調することです。
この種の方法は新規参入者にはできない、名高い歴史をもつブランドだけの魅力的な戦略です。
カルティエは1847年創業、ヴァセロンコンスタンティンは1755年にまでさかのぼることができます。
ニールセンの調査でも、創業時の遺産は重要であると4割が回答しているのです。

第三の戦略は、ひとつに集中するよりも、ブランドの枠を超えて製品を拡張することにより「ライフスタイル」に行くことです。主要カテゴリが落ち込んでいるブランドや、競合に対してエッジが効いていないと感じた場合に有効です。

たとえばコーチは、ハンドバッグから靴、アパレル、フレグランス、ジュエリーまで手掛ける「ライフスタイル」路線に舵をきっています。

ルイ・ヴィトンは、「ライフスタイル」ブランドに変身しました。1854年創業以来、150年以上旅行鞄のブランドとしてリードしてきましたが、1993年にメンズのレザーグッズを始めました。その後、アパレルや靴、ジュエリー、時計、アイウェアまで販売するようになり、2016年にはフレグランスの販売も開始します。

中国からの新需要の流入をどのように処理するのかによって、ブランドの商業的な将来は決まっていくでしょう。その事例として、先月(2014年9月)、上海に最新メゾン(旗艦店)をオープンさせた、エルメスがあります。

エルメスは、確実に競争相手を上回っています。LVMHの今年1月~6月期の売上は、日本を除くアジア地域で3%の成長に過ぎませんが、エルメスは17%も増加しています。

エルメスは、手作り製品である、ロゴが目立たないデザインという点をフォーカスして、ギフト市場の減退の影響をほとんど受けずにいるのです。

エルメスブランドのシルクのスカーフが、革製品を買えないファンに、エルメスを買える道を示していることも重要です。

実際、中国におけるブランド戦略において、この方法は聖杯のようなものです。
彼らに対して、基本的な品質に基づいてではなく、他の人に披露する手段としてアピールする商品を提供することで、ブランドは、派手でけばけばしい大きなロゴマークの消費から、顧客を切り離したいのです。

中国の高級品市場のより成熟したあかつきには、消費者は、ますますスタイルの第一人者ココ·シャネルの精神を受け入れているでしょう。「他人の目を気にしない。最高にふける、あなた自身の満足のために」。