非常勤講師=ワーキングプアか?

ダイヤモンドオンラインの「“高学歴ワーキングプア”が急増中!「官製資格ビジネス」に乗せられた博士たちの悲痛」は、大学に関係のある者として切実なこととして読みました。

実際、この記事にあるとおり、非常勤講師はとても安い報酬です。
私はそもそもボランティアの気持ちで講師をしているので、生活が困るようなことはありませんが、大学だけで仕事を全うしようと思ったら、生活の基盤を作ることすらできないと思います。

一方で、人気のない先生でもいったん正式に採用されてしまえば、報酬の見直しも行われません。
私としては、教授はじめ授業を受け持つ者に対して”終身雇用”という考え方は、ちょっとないなぁ、と思っています。理由は簡単で、大学の先生は、その専門性において実力主義のなかで評価されているためです。
個人が評価されやすい世界なわけで、一般企業のサラリーマンよりよっぽど能力主義的なはずだと考えます。

ただしこの記事にもある通り、アカデミックなカテゴリの先生ほど、今の大学において評価されにくいと思います。それは、学生が就職を非常に意識しており、実践的な授業を望んでいるためです。

そのため、Excelを使えるようになるための授業とか、PowerPointが使えるようになるための授業とかが実際にカリキュラムとして存在します。

ところが、たとえばExcelを使いこなせる学生がどれだけいるか、といば、ほぼゼロに近い、と言えるでしょう。これは、実際のビジネスにおいては、という前提がつきます。
学生に聞いても、グラフの作り方とか関数を教えてもらう、ことがExcelの授業のようです。

しかし実際のビジネスにおいては、論理的に数字でビジネスを語ることができることが求められます。つまり、四則演算が間違っていない、結果がきちんと合っている、といったことが重要なのであって、関数が使えたところで、その結果の間違いに気づくことができなければ、それはExcelを使えることにはなりません。

数字で事業を説明しているのに、あちこち間違いだらけだったとしたら、誰も話を聞いてくれないからです。

最近は企業が学校を設立したり、大学院を開設したりして、ビジネスパーソンの再教育に力を入れていますが、これもExcelの例のとおり、結局大学で教えられるビジネススキルに期待が持てないからかもしれません。

非常勤講師として4年の経験がある身からすると、実際にビジネスの現場にいる者が、ビジネス的視点から見たカリキュラムにおいて学生を教育できるのであれば、そのほうが企業にとっても学生にとってもハッピーなのではないかと感じるときがあります。

もちろん教養として大学レベルの教育も重要ではあります。
しかし教養が重要であることは、結局個人が気づくことであり、個人として教養を深めなければなりません。教育はその入り口を提供するきっかけにしかなりません。しかもそれは、学生が興味を持って講義を聴いているときにこそ、最も効果を発揮します。

これは私見であり、現実に実施することは難しいと思いますが、大学教員はすべて非常勤講師でもいいのではないかと考えています。もちろん入試の準備や、カリキュラム編成など、常勤でなければ対応できないことが多いことでしょう。
しかし、本当に学生のことを考えるのであれば、学部の再編成時はもちろんのこと、定期的な見直しなどを行って、先生の大胆な入れ替えを行うことは必要なことなのではないかと思います。

これからますます学生が減少し、学生を確保することが困難な大学が増えていくでしょう。
そんな時代だからこそ、旧態然とした人事を残したまま部分最適を行っていては経営が成り立たなくなっています。非常勤講師は、製造業における派遣社員のごとき存在なのです。つまり人件費の調整弁です。

だからといって、非常勤講師を派遣社員のように保護すべきとは思えません。理由は最初に述べた通りです。
それよりも時代に合わなくなっている人事体制と終身雇用の習慣さえ改めれば、経営のスリム化も進めやすい業界だとすら言えるでしょう。
なにしろ大学の先生とは、就職先を途中変更することは当たり前、複数の大学で教えることも当たり前、という人々なのですから。