日経 地方創生フォーラム [大学編] ~地方創生に果たす大学の役割~



昨日の午後は、「日経 地方創生フォーラム [大学編] ~地方創生に果たす大学の役割~」に行ってきました。

プログラムはこんな感じです。

■ご挨拶
 地方創生担当大臣 山本 幸三氏

■基調講演
「大学を通じた地方創生への国の取り組み」
 文部科学省 大臣官房審議官(高等教育局担当)
 内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局 次長 松尾 泰樹氏

■講演
「関東学院大学における地方創生の取り組み」
 関東学院大学 副学長 法学部教授 出石 稔氏
「地域の復興のために地域と大学ができること ~地域連携活動による人材の育成~」
 東海大学 学長 山田 清志氏
「地域創生人材の育成課題について」
 大正大学 地域創生学部学監 柏木 正博氏

■事例紹介 セッション
「東京農大の東日本支援プロジェクト ~津波被災地相馬市における農業復興~」
 東京農業大学 学長 高野 克己氏
 東京農業大学 名誉教授 後藤 逸男氏

■講演
「地域産業振興に必要な『つなぐ人材』育成」
 亜細亜大学 都市創造学部都市創造学科 教授 林 聖子氏
「山形大学におけるサイエンス・プロセス・ビジネスのイノベーションと地域創生への挑戦
  ~山形版地域創生戦略の実践~」
 山形大学 理事・副学長(社会連携担当) 大場 好弘氏

■パネルディスカッション
「産学官連携によって実現する地方創生 ~大学の役割と今後の課題~」
<パネリスト>
 関東学院大学 副学長 法学部教授 出石 稔氏
 東海大学 学長 山田 清志氏
 亜細亜大学 都市創造学部都市創造学科 教授 林 聖子氏
 大正大学 地域創生学部学監 柏木 正博氏
 山形大学 理事・副学長(社会連携担当) 大場 好弘氏



西暦3000年には日本人はたったの1000人


文科省の松尾泰樹氏による冒頭のプレゼンでは、出生率が低いままだとどんどん日本人が減ってしまうと指摘。

大学入学時を契機に、東京一極集中はむしろ高まっている、という政府見解を発表しました。

地方創生と出生率にどんな関係があるのかと思って聞いていたら、首都圏に残ると出生率はさらに低くなるので、地方に若者が還流して、少しでも子どもを産んでほしい、ということのようです。

ですが、エマニュエル・トッド氏の「問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論」を読んでいる私には、大学が地方(地域)創生学部(学科)を新設したところで、どんな効果があるのか、大変懐疑的。


地方に若者が還流するには?


この問いの答えは簡単。
首都圏並みの給与が保証されている就職先があること。

言い換えれば、地方の問題は、30年以上前から大卒者には「就職先がない」のたったひとつです。

地方では、自治体の職員(公務員)か教員くらいしか高等教育を受けた者が就職したいと思うような仕事はほとんどないのが実情です。

地方都市で成功した企業であっても、東京に本社機能を移してしまうくらいなので、適切な人材がいるとかいないとかの違いではないように思います。

今回発表した大学の事例でも、卒業生の就職先は次のようなイメージです。


関東学院大学
自治体職員。
法学部の下に地域創生学科を開設してるところがミソ。学生の安定志向のニーズをつかんでます。

東海大学
自治体職員。

大正大学
就職先がイメージできない。
きれいなお話ではありますが、経験不足?

東京農業大学
自治体職員、JA職員。就農者は減少傾向にあります。

亜細亜大学
グローバル人材を育成することが目的。
地方都市に就職するとは思えない。

山形大学
理系人材の育成とビジネス展開を模索。
地方に点在する高度な工場や研究所へ人材を輩出。


文系は、やはり自治体職員。
理系は基本的にイノベーティブ路線を取れるので、地方都市での起業、高度な施設への就職などが望めることでしょう。


地方で働く=ITスキル必須で起業


今のところ、わたしにはこれしか浮かびませんでした。

NPOとして「地域に寄り添って」みた結果、お金がなくて解散、なんて話は山ほどあります。

文系学生に教えるべきことは、起業ノウハウや経営スキル、そしてメンタルタフネスでしょう。

そもそも、首都圏で学んだ学生が地方都市に行くというのは、高賃金の就職先と安定性を捨てることになります。

つまりスタートアップの社長と同じで、味方はほとんどおらず、不安定な環境と孤独に耐えられる精神的なタフさが求められます。

地方都市とはそういうところです。

加えて、自らお金を稼ぎだすことを考えたとき、どんなに良い商材が周りにあっても、販路は地元以外の都市部、または海外になります。

つまり、ネットショップを成功させられるくらいのITスキルは必要である、ということを意味しています。


少子化対策なのか?若者の起業応援なのか?


仮に少子化対策だとすれば、地方創生とかいう美名をつかっている段階で失敗でしょう。

地方のほうが婚姻率も出生率も高いから、若者を地方に還流させたいのだと思いますが、ことはそんなに簡単ではないです。

地元の大学に進学した、コテコテの地元っ子はともかく、一度でも一人暮らし経験をした学生の多くは、結婚に対して二の足を踏む傾向が高いからです。

これは水戸の大学でも言えることで、一人暮らし経験のある卒業生の多くが結婚は遅くなる傾向にあります。

若者の起業応援なのだとすると、これまた玉虫色過ぎるし、本当に必要なことが網羅されていません。

  • 起業ノウハウ
  • 経営スキル
  • ITリテラシー
  • メンタルタフネス

少なくとも、上記4つは必須だと思うのですが、亜細亜大学がかなり網羅しているくらいで、他は違うな、という印象でした。


地方創生にかかわる大学の役割は大きいと、わたしも自身の経験から激しく同意するのですが、それがカリキュラムになると、地域・地方と若いうちに親しくなるように仕向ければなんとかなるんじゃない、というお気楽な考えが横たわっているように感じました。



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