【ダフ・マクドナルド著 日暮 雅通訳】 マッキンゼー―――世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密


マッキンゼー―――世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密 」を読了。

世界的なコンサルティング会社マッキンゼーの名前を聞いたことがある人は多いと思いますが、その歴史と、功罪について書かれています。

昨年から、出張のたびに、少しずつ読み進めていましたが、いろいろと面白い記述がありました。

たとえば、マッキンゼーは、どのようにしてクライアントを獲得しているのか?

ベイン・アンド・カンパニー出身者の証言として書かれていたのは、ベイン・アンド・カンパニーが1週間かけて綿密な提案書を作成している間、マッキンゼーは取締役を接待し、食事をしていた、というものです。

つまり、高額なコンサルティング契約に必要なものは、提案書ではなく、取締役(つまり決定者)との個人的な関係、だというのです。


また、マッキンゼーの同窓生たちが、世界中の著名な企業に入り込み、オバマ政権にも多くの元マッキンゼーがいることは、日本に住んでいると、わからないかもしれません。

マッキンゼーのコンサルティングの功罪として、2000年前後のいくつかの事例が出てきましたが、エンロンの破たんについては、こういうアドバイスを自分自身もやってしまう可能性があるな、と感じました。


もはや歴史の1ページとなってしまった感のあるエンロンの破たんですが、本書を読んで、エンロンの簿外での金融取引を承認したのがマッキンゼーだった、とありました。

また、実際に発電所などに投資はせずアウトソースし、契約交渉や資金調達による資本軽量化戦略もマッキンゼーのアイデアでした。

コンサルティングには、ある課題に対しての回答案を提示することが求められます。

その回答案を考えるとき、法の目をかいくぐるようなプランを考えつくことがあります。
それ自体、誰もやっていないプランです。

そういうプランを思いついたとき、きっと、喜んで進めてしまうかもしれない自分がいるな、と感じることがあります。

結果として、それが法的制裁を受けるとしても、始めたときはそれが最善の策だと信じて動くことがあるのではないでしょうか。

マッキンゼーの功罪を語る本書には、マッキンゼーが悪だ、という決めつけはほとんどありません。

むしろ、実体経済を支えるような企業に進まないMBA取得者が多いこと事態の問題点の指摘や、コンサルタントがマッキンゼーをやめて転職した企業内で困惑する、階層的な組織構造であり、企業文化であり、マッキンゼーでは通用した議論が通用しないことであったり。

最も苦手なことは人的マネージメントであることなど、いかに優秀なコンサルタントであってもできないことがある、という点を控えめにではありますが、書いています。


本書のなかで、マッキンゼーを代表する人々が紹介されていましたが、日本支社長を務めていた大前研一氏について、何度も記述があることに驚きました。

「エンペラー・大前」というチャプターで、1980年代後半のマッキンゼーで最も有名で、その言葉を最も頻繁に引用されたコンサルタントであり、世界的ベストセラーを出している、と紹介されています。

本書を読み通すには時間がかかりますが、コンサルティングという業務と、コンサルタントという職業をつくりだしたマッキンゼーの歴史は、経営者には参考になることが多いと感じました。


マッキンゼー―――世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密

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