BS世界のドキュメンタリー シリーズ 値段の真実 「低価格時代の深層」

BS世界のドキュメンタリー シリーズ 値段の真実 「低価格時代の深層」を観ました。
2012年フランスの制作です。

取りあげられているのは、アイルランドのLLC ライアンエアー、ドイツのハードディスカウントストア、ルーマニアの養豚場や自動車製造工場などなど。

制作者の意図はとても哲学的で、ディスカウントが蔓延することそのものが、人生をディスカウントさせている、というもの。低所得者を救うディスカウントが、労働賃金や労働条件をディスカウントしているのだというのです。

いずれの事例も、10年位前の日本をほうふつとさせました。
派遣契約のパイロットやキャビンアテンダントの話は、高額な社会保障費の会社負担軽減へとつながります。

ドイツのハードディスカウントストアの事例は、さらに日本的です。
従業員をマニュアルで縛り、従業員同士を高度に組織化しています。しかし、その内容は、日本のコンビニやスーパーのものと、大きな乖離があるわけではありません。

ルーマニアの養豚場は、米国資本ですので、ディスカウントというよりは、ローコストを求めてルーマニアにやってきたが、環境汚染になっている、というもので、ディスカウントのテーマからすると、すこしずれているかな、と感じます。

フランスをはじめとするヨーロッパ各国は、長い不況に苦しんでいます。
その中で活況を呈するディスカウンター達を取りあげ、彼らの利益の源泉が何か、それは不当なものではないのか、といった社会主義的な視点で番組を構成しています。

日本では当たり前のことが、ヨーロッパ、とくにフランスでは大問題にされている理由のひとつに、歴史に裏打ちされた国民性があると思います。

これは、レストランの予約システムをインターナショナルに展開しているオープンテーブルの日本社長で、本社マネジメントにも入っている手嶋 雅夫さんにお話を聞いたときのことです。
オープンテーブルのような、効率を求めるサービスは、ユダヤ的なものなので、フランスのレストランにはなじまない、のだそうです。
過去に進出したけれども、結局撤退した経験をお持ちで、なるほどな、とその時は思ったものです。

ディスカウンターの目指すところは、徹底した効率化です。
それが、フランス人にとって違和感がある、というだけのことなのかもしれません。

もちろん、労働者の権利を守ることは重要です。
ディスカウンターで働く人々の平均雇用期間は、2年3か月。
マニュアルに縛られているためストレスが多く、うつ病になる人も多いとか。

これはゆゆしき問題ではあるかもしれませんが、それなら、日本のほうがもっとひどい状況にあるのではないでしょうか。今やうつ病は、日本のサラリーマンの一般的な病気になっていますから。

一方、ディスカウンター経営者の立場に立つと、高い能力を持っているなら、自分の会社で働くはずがない、と考えているのではないかと思うのです。

先ほどのルーマニアの低価格自動車製造工場の工場主任の男性が、自分は自動車を作って25年のキャリアがある、なのにサラリーが低い、と発言していました。

組立に熟練していることはすばらしいでしょう、多分。
しかし、低価格自動車にはR&Dは存在しません。過去の技術を集めて、いかに安く作り上げるか、だけです。
熟練しているから賃金を高くできるかと言えば、それは無理な相談だと思います。

経営者の多くは、その人にしかできない仕事をやってくれる人々には、高額なサラリーを払っても良い、と考えています。
取り換えがきく人材には、取り換えがきく待遇しか与えられないのです。それが競争というものです。

ユニクロの柳井社長が、人件費を世界的に統一する方向性を示して、一時物議となりましたが、優秀な人材には国籍は関係ない、と考える経営者が増えてきていることは間違いありません。

日本人だから雇用が守られると考えるのは間違いです。
アメリカの貧困層の多くが、白人となってきていることもひとつの示唆でしょう。

競争的な社会においては、自らの能力を示し、自分で道を切り開いている人には、広くて快適な道が示されますが、レイジーな人には、狭く厳しい道しか与えられないのです。