希望を捨てる勇気


池田信夫先生の「希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学」を読了。
いつもブログを拝読しているので少しはわかったつもりでしたが、今回一冊の本として通読して、さらに理解したような気になりました。
池田先生の著作は、何より飽きない、飽きさせないテンポがあります。そのため、本当は寝ていたかった電車の中で読んでしまったり、本当は仕事をしなければならなかった今日も読んでしまいました。このブログを書いたら仕事に取り掛かりますので、関係者の皆様お許しください。

さて、本書はまず、大学生や少なくとも20代より下の世代にぜひ読んで欲しい一冊です。なぜなら、本来なら将来に向けて夢や希望を持っていてしかるべき世代を追い込み、閉塞感を感じさせる今の日本の構造をわかりやすくひもといているためです。
解雇できない雇用慣行がその大きな原因であることや、規制が多すぎ、官僚が跋扈する経済構造によって、バブル崩壊後の不良債権処理が遅れたことなど、これまでも池田先生がブログで書かれてきたことをまとめています。

話は違いますが、起業して10年も経つと社内には仕事のない高給取りがどんどん増えてきます。
ベンチャー企業の多くは、そういう人々を嫌い、効率の良い企業経営を目指していたはずなのですが、いつの間にか増えてしまうのです。

理由は簡単で、
1.取引先からや社長人脈で、他社では必要の無くなった人材が入ってくること。
2.採用において、自社内の給与水準を厳密に守らないこと。
3.試験期間を短く設定しており、しかも試験期間終了前に採用条件の見直しなどを行わないこと。
などがあげられます。

人事機能が弱いことが、高級な社内失業者を集めてしまう最大原因なのですが、こういう方々は仕事ができないだけでなく、企業内のモラルを低下させる原因ともなります。
なぜなら、他社が必要でないと判断したような人材なのですから、能力的に低い場合が多く、意欲もありません。そしていったん雇用してしまうと、解雇ができないことをいいことに絶対にやめません。

最近人事制度、特に給与についてどのような政策を取るべきかについて少し調べているのですが、基本給を低く設定し、オプションをたくさん設定していくような方法が最適ではないか、という考え方をあちこちで見ました。

たとえば、役職手当を多めに設定しておけば、その人が役職から離れたときに基本給に戻すことが可能です。また非正社員と正社員との労働単価を同一にする場合にも、このようなオプションは有効に働かせることができます。上司からの残業命令を引き受ける人、つまり正社員には残業命令引受オプションとして手当てを支払います。非正社員にはこれはないという前提ですね。他にも出張の有無など、オプションはいろいろと考えられそうです。

このような給与体系におけるリスクヘッジでもしなければ、社内失業者に対する人件費をコントロールできないという現実があるのです。
もしも社内失業者を合理的に解雇することができれば、上述したような人件費コントロール政策を考える必要もないですから、その管理コストも必要がなくなりますが。

いずれにせよ、私は若年層がなぜ怒らないのか、本当に不思議です。
年金は死に行く老人に持ち逃げされ、正社員という枠は社内失業者のためにどんどん狭まっています。しかも官庁はそれを後押ししているわけです。
アナーキーな人なら、自ら稼げない後期高齢者は、船に乗せて太平洋上で爆破するくらいのことを考えていてもおかしくないくらいに日本は病んでいます。
規制強化する官庁の多くは爆破テロのターゲットになってもおかしくないくらいに希望はありません。

善意や正当な主張ほど厄介なものはありません。
情緒に流されやすく、多数の支持を集めるためです。しかしお金がかかる以上、その実効性やリスクを検証することは重要な意味を持ちます。

日本では、企業においてさえ、徹底的な検証や、シミュレーションが行われなかったり、また行われていたとしても経営陣の情緒的な判断でプロジェクトが動いてしまうのですから、政治や政策においてそのようなことが行われるはずがありません。数字に弱い人が多いのも、日本の国力を下げる原因のひとつではないかと思います。

絶望を知ることこそ重要だと本書にも指摘されていますが、絶望を知るためには、日本人のよくわからない、根拠レスなプライドをまずは徹底的にぶっ壊すことが必要ではないかと考えています。
たとえば、アジアのなかで日本は一番である、という思い込みはもう捨てたほうがいいです。中国や韓国など、日本を凌駕する国々が登場してきていますし、そちらのほうが進んでいる場合も多く見られます。

しかし多くの日本人は、いまだに日本は素晴らしい、日本人は優秀だ、と盲目的に信じています。
これは英語ができない人が多いためでもあるのですが、一部上場企業に勤める課長くらいの人なら、すでに日本と日本人がダメだということに気づいているはずです。
現実の競争で負けてきているのですから。