武士の家計簿


武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)」を読了。

2003年に発行されるや話題になった著作です。

御算用者とは、会計の技術で藩政を切り盛りした武士のことです。本書の主人公の猪山家は、藩主の側近として活躍しますが、下級武士です。そのため所得が低く、破産の危機に見舞われます。

破産からの脱却を目指したその時から、猪山家は詳細な家計簿を長年に渡ってつけるようになります。
本書は、その家計簿をひもとき、分析、まとめたものです。

本書を通して見る猪山家はリアルで、現代に生きる我々となんら変わるところがありません。そのためでしょうか、とにかく引き込まれます。そして面白い。

御算用者は、借金しながらなんとかやり繰りして家格を堅持しなければならなかった大名に必要な存在です。言い換えれば、数学ができれば藩主の側近になれたという事実を示しています。

また猪山家は、幕末から官軍の兵站を一時期やっていたことから、明治に入ると海軍においてその能力を発揮しています。

つまり、数学の知識が近代化の中で重要であったことがわかります。

著者もあとがきに書いていますが、組織を離れ、個人として必要とされる何かを持っていることが、時代の転換期に生き延びる術であることを、猪山家の人々が示しています。
不安な時代だからこそ読んで欲しい一冊です。


武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

磯田 道史 新潮社 2003-04-10
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