人はなぜ形のないものを買うのか


成蹊大学の野島美保准教授の「人はなぜ形のないものを買うのか」は、オンラインゲームを中心に仮想社会におけるビジネスモデルについて調査・研究した書籍です。
この分野についてここまで丹念に書かれたものは少なく、あまりゲームをやらない私のような人間にとっては、よく理解できる参考書的な存在です。
便利でお得な電子マネーですらまだまだハードルが高いようで、携帯電話でSUICAやnanaco、Edyなどを利用している人が、自分の周囲にはそうはいないことを昨日も確認したばかりです。
一方で、デジタルコンテンツにどんどんお金を費やすことに躊躇しない人々とはいったいどういう満足を求めているのでしょうか?

日本のTVゲーム業界がもっとも派手で競争が激しかったのは1990年代中盤です。おもちゃショーからゲームショーが枝分かれし、CESAが設立されたのもこの頃で、当時、仕事でご縁があってゲームショーもCESAにも何度も足を運んだものです。コスプレも今では普通になってしまっていますが、当時は、珍妙なコスチューム集団の相互写真撮影会、のようにしか見えませんでした。
オンラインゲームももちろん当時からあって、ウルティマオンラインなどが有名でした。初代ファミコンが出たときにはすでに大学生だった私は、TVゲームこそ少しはやりましたが、オンラインゲームとなると全く触ったことのない世界。それだけに、世界観がわかりやすく、読んでおもしろいのが本書です。
私がくどくど説明するより本書を読んでいただいたほうが良いと思いますので、今回も目次の紹介をしておきます。

第1部 デジタルコンテンツの収益モデル
1.デジタルコンテンツのビジネス問題
2.価値分析
3.時系列分析とタイミング
4.収益性分析

IT系のビジネス分野を研究したり、仕事で身を置く者にとって、デジタルコンテンツは儲からない商売という認識があります。よって広告取得型のビジネスモデルになりがちだということを説明した上で、それでも収益を上げるにはどうすればいいのか、という大命題を提示して論が進みます。2以降は主としてオンラインゲームユーザーにとってのデジタルコンテンツの意味について詳細な分析が行われていますが、かつてISP(Internet Service Provider)にも席を置いたことがある私にとって、重要顧客とは誰? そして売上を支えてくれるのは誰? という分析を重ねた記憶がよみがえりました。

第2部 形のないものを売る仮想世界サービス
5.仮想世界の設計理念
6.オンラインゲームの事例
7.広告モデル

ここではオンラインゲームだけではなく、ネット上のコミュニティ基盤となっている仮想世界についてまとめられており、第3部へと続きます。

第3部 仮想世界のマネジメント
8.仮想世界の生成条件
9.アイデンティテイ
10.コミュニティ
11.関係性の創出と公平性
12.仮想世界の経済システム

全体として、コミュニティに関するマネジメントと読み替えたほうが良いかもしれません。コミュニティとは”居場所”なので、人が集まる以上人間関係のマネジメントが必要です。情報の伝達をはじめ、誰がリーダーになるのか、といったことに言及されています。

全体を通して感じたことは、ネット世界の新しいビジネスのことと考えて読むよりは、コミュニティ・マネジメントの一形態を論じたものと捉えて読むのもまた一興ではないかということです。