ラーメン屋 vs. マクドナルド


竹中 正治氏の「ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層 (新潮新書 279) 」を読了。著者は財団法人国際通貨研究所のチーフエコノミストです。
この本を読むきっかけになったのはタイトルです。9月の夏季セッションで、「幸楽苑」の新田社長のお話をうかがったためです。新井田社長は、自らの会社をマクドナルドのような存在にしたい、と語っておられましたので、興味を持った次第です。
アメリカ大統領が決まって、オバマ政権下の日米関係が話題に上がってきていますが、この本は日本とアメリカの違いをテーマ別に解説したものです。エコノミストらしくデータを使った説明が含まれ、説得力があります。
目次を紹介しておきます。そのほうがこの本の中身を理解いただけると思いますので。
1.マックに頼るアメリカ人vs.ラーメンを究める日本人
(1)日本人教授が米国で語る「だから日本はダメなんだ」論
(2)日本アニメ職人の心意気
(3)「マクドナルドモデル」対「ラーメン屋モデル」
タイトルになっている点を書いた章では、日本では職人であり続けようとする人が多いことを指摘。ポップカルチャーがこういう人々によって支えられていることを書いています。
2.希望を語る大統領vs.危機を語る総理大臣
(1)普通だったら「Excellent」
(2)「インデペンデンス・デイ」と「宇宙戦争」
(3)それでも日本の危機管理が甘いのはなぜか?
危機管理能力が低い割りに課題とか問題点を連ねる日本人の特質を捉えて、リーダーシップ(主体的意識)の不在と表裏だと指摘する。ビジョンなきままに進むために、危機感をあおることで全体を動かそうという無意識な行動に出るということでしょう。
3.ディベートするアメリカ人vs.ブログする日本人
(1)文字文化の日本、対面文化のアメリカ
(2)商売上手なシンクタンク・ボスとの対面
(3)討議は闘議なり
文字種が多く、表意文字の漢字を使用していることで子供のころから書き取りの練習時間が多い日本人は文章による表現が得意だという指摘には納得しました。また本場のディベートの様子が生き生きと描かれており、なるほど!と理解できました。
4.「ビル・ゲイツ」vs.「小金持ち父さん」
(1)ジャパンマネーは本当に臆病か
(2)リスクマネーの背後にある超格差社会
(3)日本人よ、万羽のミニハゲタカとなって瀕死の虚像を啄ばもう!
このあたりからエコノミストらしい分析が登場してきます。投資などにマネーが回らない日本では、日本人は文化的にリスク回避志向だから、といわれるようですが、調査データではそのような傾向は見られない。それならどうして預貯金にマネーが滞留するのか、について解説しています。
5.一神教vs.アニミズム
(1)アニミズムの精霊「ポケモン」
(2)「ハリー・ポッター」に反発するキリスト教徒たち
(3)キリスト教公国の大統領
日本人が何にでも魂があると認め、神として祭るからヒューマノイドタイプのロボット開発が盛んになるという口上にはじまるこの章は、アメリカの保守的な政治性向のバックグラウンドについて解説したもの。池田信夫先生も、アメリカ人は資本主義のなかで自らの能力だけで生きていくことを求められるために、パーソナリティを維持するために宗教に向かうのではないかと指摘しています。三浦展氏も「日本溶解論」の中で、従来の社会構造が崩れ、自らのポジションが不明な若者が宗教またはそれに近いものに向かうのは当然のこと、と指摘しています。日本は一神教なのでアメリカみたいなことにはならないでしょうが、保守化するのは間違いないような気がします。
6.消費者の選別vs.公平な不平等
(1)信用データ絶対主義
(2)「新銀行東京」失敗の本質
(3)アメリカの超格差社会は日本の未来か?
官業はリスクに応じて異なるコストを利用者に求めず、一律的な価格に基づく「公平なサービス」の提供を理念としているため、日本のようにいまだに官業が幅を利かせる社会では、民間企業も同じ条件に収斂されていると指摘。本当にそうです。公平のツケが回りまわって、ごくごく真面目な消費者にやってくる。
また金融庁がリレーションシップ・バンキング強化手段として「スコアリング方式」導入奨励を撤回したことを批判して、日本の中小企業が求める資金の性質を理解していないためにスコアリング方式がうまくいかないと解説する。ちなみにその資金の性質とは、①無担保、②低金利、③短期融資でも借換を継続することで実質長期資金として利用できる、というものである。これは民間では実現できない条件であり、本来は資本だと指摘する。金はほしい、経営権への介入はお断り、では実現できない、と書く。
加えて、流行語になってしまった「格差社会」には根拠がないことも説明する。
最後の章を読むだけでも価値がある本です。