逆行する日本4 <老人医療>

後期高齢者医療制度について、見直しの議論が行われています。
しかし実際のところ、どれだけの人がこの医療制度を理解しているのでしょうか。
私が調べた中で、最も論理的に説明されていたのは、大和総研の齋藤哲史主任研究員による「後期高齢者医療制度は“破綻救済”が目的!」というコラムです。

このコラムの骨子は、以下に集約されているので、引用します。

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(略)退職後は年齢を重ねるにつれて収入が減るケースが一般的である。ということは、老後の医療支出を賄うには、就労期に支払う保険料の一部を、将来に備えて貯めておくことが不可欠となる。そのようにして始めて、自分たちの老後の医療費を賄えるわけだ。したがって、医療保険を設計する際には、老後に備える仕組みにしておかない限り、財政的に持続可能にならない。

ところがわが国の医療保険は、1年ごとに更新を行う短期保険(単年度会計)のようなもので、老後に備える財政設計になっていない。後期高齢者医療制度に対する批判の1つに、「自分たちは保険料を長年払ってきたのに、無効にされてしまった」がある。おそらく民間保険をイメージしているのだろう。老後の医療費相当分は働いている間に払い終えている、という意味だ。しかし日本の医療制度では、拠出した保険料はその年に消費され、一部を将来のために引き当てておく構造にはなっていないのである。

(中略)

こうした背景を理解すれば、新制度の意味も明らかになってくる。医療保険を75歳以上で区分したのは、債務超過状態を明確化することによって透明性を高め、税金と全国民が拠出する保険料を投入することによって債務超過分を穴埋めするためなのである。これは1980年代に巨額債務を抱えた国鉄を、存続可能なJRと債務処理を行う国鉄精算事業団に分割して最終的に国民の負担としたこと、および2000年前後に不良債権を抱えて経営難に陥った銀行を、公的資金の投入によって救済したのと同じ構図である。
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後期高齢者医療制度が、広域連動という名前の都道府県単位での新規の制度であることが、従来の市区町村によるものと異なっていることで保険料が上下するなど、国による説明不足の観はぬぐえません。いずれにせよ、現状では最もベターな制度であると評価する専門家も少なくないのです。

情緒的な報道によって本質を見失いそうになりますが、後期高齢者医療制度が地方分権へのひとつのステップであること、破綻した保険制度を救済する方法であること、をまずは理解したいものです。

このまま情緒的な議論が続いて、若年層の負担がこれ以上増えることがないようにお願いしたいと思います。